Kindle版『カブール・ノート増補版戦争しか知らない子どもたち』の予約注文受付けが始まりました!

Kindle本『カブール・ノート 増補版: 戦争しか知らない子どもたち』の予約注文の受付が始まりました。
2023年7月15日発売です。11万字から18万字への原型破壊の大幅増補です!

電子書籍版のためのまえがき

 『カブール・ノート』は2001年に出版された単行本も、2004年に出版された文庫本も長い間絶版になっていました。その間、アフガニスタンはまた徐々に静かに忘却の底に落ちていきました。しかし、そんな頃にもずっと『カブール・ノート』の再版はまだか、電子書籍版は出ないのかという問い合わせが途絶えることはありませんでした。

 2021年夏、アメリカはアフガニスタンからの撤退を決行、そもそもの撤退の是非とあまりに杜撰なオペレーションを巡って世界中がまた突然目を覚ましたようにアフガニスタンを語り始めました。

 2001年から2021年までの20年間にアフガニスタンに起きたことは、ほぼ正確に予想されたことでした。私一人が予想したのではなく、それまでアフガニスタンの仕事に長く関わっていた人たちはほぼ例外なく同じような思いを持っていました。我々は、歴史にhard revenge を受けることになるだろうと。

 そして、アメリカによるアフガン空爆以後、他国主導の復興援助や国作りというお祭り騒ぎのようなイベントに参加してしまっている自分の位置に耐えられず、彼らはアフガニスタンを去っていきました。私もその一人でした。

 莫大な額のお金と時間が浪費されただけなら、しょうがないと言えるのかもしれない。しかし、国際社会の“正義”を実現するために、膨大な数の人の命が失われた事実をしょうがないと済ますことが出来るのだろうか。

 人は、自分に正義があると信じた時、一番恐ろしい存在になる。正義と悪がそれほど絶対的に簡単に分けられるものなら、人間の社会は数百万年も前から争いのない素晴らしい世界になっていたでしょう。

 こういうことを言うと、そうか、お前は○○派なのかとか、△△派なのかという話にすぐに収束する人たちがいる。そうやって、彼らは絶対的な拠り所を求めて“正義”の味方になる。中途半端でどこにも拠り所がなく、もっとも頼りなく不安な場所にこそ、真実があるなどとはまったく想像もしない。安直な正義をふりかざすことによって、もっとも安直に自由の重荷から逃れるようとする。

 『カブール・ノート』が出版されることによって、そのような人に多く出会ったし、SNSでは、毎日その大群と遭遇している。“公に発言する”ということの一つの意味は、理解の不在を確認するということなのだろう。

 その一方で、二十年近く根気よく再版はまだか、電子書籍版はまだかと尋ね続けた人たちもいる。そんな中の一人が、2021年夏が終わった頃、ネット上で『カブール・ノート』の文庫本が新品で売ってましたよと教えてくれた。まさか、何かの間違いだろうと思ったが、本当だった。アフガニスタンからの米軍撤退騒ぎに乗じて出版社が第2版を出したらしい。著者は知らなかったのだが。

 しかし、その文庫本もまた残り少なくなったようだ。今は街の書店の片隅に残っているのを発見する楽しみがあるらしい。アフガニスタンに光が当たり、人々がアフガニスタンを語り始めれば、『カブール・ノート』も浮上し、人々がアフガニスタンを忘れ始めれば、『カブール・ノート』も消えていく。

 人々が忘れようが語ろうが、アフガニスタンは消えないのだから、『カブール・ノート』も消えない電子書籍が一番ふさわしいと思う。

* * *

 この増補版『カブール・ノート〜戦争しか知らない子どもたち』の電子書籍には、単行本として出版された『カブール・ノート』のオリジナルの原稿の他に六つの短編が収録されています。

「戦火のカーブルから」は、『カブール・ノート』よりも前に書かれた私信が元になっています。

「カブール・ノート〜戦争しか知らない子どもたち」は、オリジナルの単行本の原稿に「文庫化に寄せて」を加えたものです。

「カブール・ノートII〜hard revenge」は、『カブール・ノート』出版後、カブールに戻ってから「カブール・ノートII」として書き始めたものです。No.0からNo.3まで書いたところで中断しました。電子書籍化にあたって「hard revenge」の未発表原稿が見つかったので、それをつけ加えました。

「砂へ返る」は、坂本龍一氏監修『非戦』のために書いたものです。

「10.7 アフガン空爆後の世界」は、9.11の一年後に東京新聞に書いたものです。

「アイ・ラブ・ピースのために」は、映画『アイ・ラブ・ピース』のパンフレット用に書いたものです。

目次

電子書籍のためのまえがき

戦火のカーブルから

前書き
カーブル発第一便(1997年5月10日)
カーブル発第二便(1997年5月17日)
カーブル発第三便(1997年6月2日)

カブール・ノート

刊行に寄せて
No.1 アメリカの一撃
状況
“撤退”できる人道援助機関
国連には何も用意ができていなかった
人道援助と政治
フラッシュバック 「…………」
No.2 戦争しか知らない子供たち
アフガニスタンに物乞いはいなかった
聖戦とエクソダス
略奪・レイプ・アナーキー
フラッシュバック「分断された音の記憶」
No.3 神の戦士たち
伝説起源
無敵神話
神の戦士
フラッシュバック「超国籍者の誘惑」
No.4 オサマ・ビン・ラディンという現象
戦争は土木工事でもあった
オサマ・ビン・ラディンという男
聖戦時のオサマ・ビン・ラディン
湾岸戦争とオサマ・ビン・ラディン
アメリカ人の死刑宣告──ファトワ
次世代のオサマ
フラッシュバック「観察と力」
No.5 夏の総攻撃
夏の総攻撃
カブールの「悲愴」
文化としての人権
冬が来た
No.6 アフガニスタンの女たち
都会の女たち(1)
都会の女たち(2)~宮廷
都会の女たち(3)~反動
村の女たち
売却されるアフガン女性の尊厳
難民キャンプの女たち
No.7 カブール・日曜、午後4時の電話
状況
満ち足りた鬱屈。
欲情するパラダイス
僕はいつかきっと君に逢う
No.8 ネイビーブルー・チルドレン
ネイビーブルーに死んでいく
『特権クラブが奴隷の叛乱を鎮圧する』?
コントロールされた誇り
No.9 私は君の側にいる
絶対に死ぬな!
標的
分裂・離脱・同盟・寝返り
プロパガンダ、もしくは悪魔のゲーム
不寛容な自由主義
No. 10 「国家、あるいは私の独立」
今、始まったわけではない
日本の独立
日本人だから……
あとがき
文庫化に寄せて
参考文献

hard revenge

まえがき
< hard revenge no.zero >
< hard revenge no.1 >
< hard revenge no.2 >
< hard revenge no.3 >
FM 102.4
Long Distance Affairs
Greed Game
再び、FM 102.4
< hard revenge – 書き損ねた断片 >
Crazy だ
踏んだ
NGO
気楽な稼業
危ないか?
人事の嵐
みんなパニック
はあ?
近代化
悪魔からの解放
訪問者

対談:村上龍 X 山本芳幸

無知と貧困
国家の舵取り
タリバンの意味
アメリカの両義性
国家の主体性
国家/政府承認
テロとアメリカの属国
コミュニケーション
Contingency Plan
中立性の維持
情報開示
お金と人事

砂へ返る

20年後のまえがき
砂へ返る

10.7 アフガン空爆後の世界

「9.11」から1年.

アイ・ラヴ・ピースのために

Tips

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