ミアシャイマーが読み替えるウクライナ戦争の起源

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目次

  1. 西側で定説となった物語
  2. ミアシャイマーによる三つの戦略類型
  3. 西側の定説に対するミアシャイマーの反論
    (a)投入された兵力の規模と性格
    (b)開戦翌日から始まった交渉
    (c)国家の存亡にかかわる脅威(existential threat)
    (d)限定された戦争はなぜ終わらなかったのか

1. 西側で定説となった物語

最近、シカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授が、自身のYouTubeチャンネルを開設した。チャンネル名は「John Mearsheimer – Offensive Realism」。討論番組やインタビューに頻繁に登場する彼が、他人の質問に答えるのではなく、自分で論点を選び、自分の順序で話すための場所だ。
2026年7月31日に配信された第1話のタイトルは、Episode 1: Origins of the War in Ukraine――「ウクライナ戦争の起源」だった。[1]

ロシアによるウクライナ侵攻について、西側では、戦争を説明する一つの物語がほとんど定説となっている。日本でも、主流メディアを通じて繰り返し伝えられてきた物語だ。その内容を要約すれば、次のようになる。

プーチンはウクライナ全土を征服し、ロシアの支配下に置こうとした。ロシア軍は圧倒的な軍事力によってウクライナ軍を短期間で打ち破り、全土を制圧する作戦を始めた。しかし、ウクライナ側の激しい抵抗によって短期制圧に失敗し、戦争は長期の消耗戦へ移った。さらに、ウクライナ征服後には東欧のほかの地域にも進出し、かつてのソ連圏を再建しようとしていた。

ミアシャイマーは、この物語をその出発点から否定する。ロシアが最初からウクライナ全土の征服を目指していたという西側の前提は、ロシアが実際にとった軍事行動と、開戦前後の外交交渉に照らせば成り立たないと主張する。

2. ミアシャイマーによる三つの戦略類型

ミアシャイマーは、大規模な通常戦争を検討する国家が採り得る戦略を、三つの類型に分けている。

彼は博士論文で、通常戦力を備えることが、相手に戦争を思いとどまらせるうえでどのように働くのかを研究した。それをもとに最初の著書『Conventional Deterrence(通常戦力による抑止)』を書いた。[2] 冷戦期に欧州で対峙していたNATOとワルシャワ条約機構の関係には、2022年のロシアとウクライナの軍事的対峙に通じるものがあると、彼は考えている。

ただし、今回の話を理解するために、通常戦力抑止論の全体を追う必要はない。重要なのは、国家が大規模な通常戦争を始める際の戦い方を、ミアシャイマーが三つに分けていることだ。

第一は、短期間で敵を全面的に打ち破る「ブリッツクリーク戦略(blitzkrieg)」だ。ブリッツクリークは、1940年にドイツ軍が短期間でフランスを制圧した作戦と結びついて広まった言葉で、日本では「電撃戦」と訳されることが多い。

第二は、長期戦によって敵の兵員や装備を削り、最終的に決定的な勝利を得る「消耗戦略(attrition strategy)」だ。ブリッツクリーク戦略との違いは勝利までに要する時間であり、どちらも敵を全面的に敗北させることを目指す。

第三は、敵国全体を打ち破るのではなく、一部の領土や限定された政治的成果を得た後に守勢へ移る「限定目的戦略(limited-aim strategy)」だ。

限定目的戦略は、当初の軍事的成果だけなら得やすい。しかし、相手の軍隊と抗戦能力は残されたままだ。相手が奪われた領土や押しつけられた条件を受け入れなければ、限定的に始まった戦争は終わらず、長期の消耗戦へ変わる可能性がある。

それでも国家が限定目的戦略を選ぶことがあるのは、全面的な勝利を確信しているからではない。直面する政治問題を放置できず、交渉による解決も不可能だと判断し、限られた軍事行動によって状況を変えようとするからだ。[3]

ミアシャイマーは、その例として1973年のエジプトと1941年の日本を挙げる。

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