2023年9月10日に憲法リテラシーの7. 「家族と国家」を実施しました。前回の6.「個人の消滅」に引き続き、今回も自民党憲法改正草案を見ていきました。
家族という概念自体はニュートラルのものと考えられるでしょう。しかし、どうして憲法が国民に向かって「家族は助け合わなければならない」なんて言うのでしょうか?憲法は道徳規範ではありません。国民がお金を出し合って、国民の意思で作りたい国家の姿を憲法に書き込み、それを守らせるために憲法は存在します。憲法は国民による国家に対する指示書なのです。憲法が国民にある一つの道徳を諭すなどというのは、思想がまったく逆転しています。憲法リテラシーのPart IIを「憲法から教義へ」と名付けたのは、この改憲案の姿勢のことを指してのことです。
自民党改憲草案における「家族」の登場は、国防軍の創設や緊急事態条項の導入ほど騒がれていませんが、「個人」をしれっとただの「人」に入れ替えたのと同様、自民党改憲草案の基礎にある思想をよく表しているように思えます。江戸時代から続く「イエ」の思想は現代日本にも連綿と受け継がれています。「イエ」を支えるのは徹底した「場」という「枠」であり、「タテの序列意識」が全成員を縛り付けます。そして「イエ」はお国のために頑張ります。
前回、自民党憲法改正草案は大日本帝国憲法どころか慶安の御触書に戻ろうとしているという憲法学者の話を紹介しましたが、今回も突き詰めると、やはり曲がりなりにも近代化の過程であった明治を通り越して、江戸に戻ろうとしているように見えました。
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参加者の感想など
家族が関係することなので、とても身近な問題として、とらえることができました。こんな憲法に改定されたら、特に女性には大打撃、絶望しかないです。また家族間の問題が多数浮上している今、家族を社会基盤の単位とすることは、大きな混乱を招き、上級国民(と思っている方々)にも、良い選択とは思えません。そこをどう考えているのでしようか?議員の方々も改正案をよく読み、考えて欲しいです。
riria
[家族]という聞き心地の良い言葉が, 実は[個人]を抹殺し, 先人がせっかく獲得してくれた権利をかなぐり捨てていく. [国家]が効率的に庶民から徴税し, 戦争に動員する. それを助長する改憲 を阻止する必要を改めて感じます. ➡意義深い講義にいつも感謝!
Koichi IITAKE
自民党の憲法改正案が、昔から続く日本社会の構造をそのまま踏襲していることが良く解りました。 特に今権力を握っている自民党の層がまさに「体育会系マチズモ縦社会人間」なので、その侭の時代遅れな女性にとって過酷な内容なのにはうんざりしました。
毎回、自民党の憲法改正案の醜悪さに嫌気がさしますが、勉強して阻止しないと大変な事になりますので次回の「憲法リテラシー8」も愉しみにしています。
ありがとうございました。
翔空
私は豪州在住ですが日本の友人と話すと嫌というほど「日本人の意識と自公政権の親和性」の高さを感じます。そしてその意識はいくら話しても変えられない。
人権意識など学校や社会や家庭で教えられていない『知らないもの』は理解できないのだと思います。理解できないではなく理解を拒む感じといいますか。
なるべくわかりやすく豪との比較や憲法リテラシーでの学びを織り込んで軽く話しても、日本人に染み込んだ意識を変えるのは至難の技、、でも中根千枝さんの著書に何らかのヒントがある気がしています。電子書籍がありましたので読んでみます。
毎回新しい気付きに感謝します。
よしさん、今日も貴重な学びをありがとうございました。
自民党の憲法改正案が家族の助け合いを主張し、国が国民に対して社会権を保障する義務を怠ろうとしている件、問題は社会保障費の削減に留まらないと思う。家族で助け合えない人を国が助けないのは、人として認めない事だと思う。家族がセーフティーネットの役割を果たすため、個人が網から落ちないよう自分の思想を押し殺すようになる。ハラスメントも多発する。国民を人として殺すことにならないか。
「活力ある」「経済活動」について。人生は山あり谷ありだから、人は活力あるときも無いときもある。「経済活動」で金儲けをしたいのだろうが、人が行う「経済活動」に「活力ある」を付けるのが気持ち悪い。「沢山食べて、栄養をつけて、明るい笑顔で中国に打ち勝つ」の明るい笑顔を求められる気持ち悪さと似ている。
国民の快も不快も全て、コントロールできると考えているのでは?改正案自体がタテ社会の考え方で、上から見下ろすように作られていると思う。人はお互いにフラットだ。
自民党改憲草案を読むほどに、その中身の悪質さに呆れます。基本的人権と国民の生活を守ることは国の責務であることを憲法から取り払い、国民が国を守る義務を負うことを憲法に盛り込むという実に愚かな内容に変えることを目論んでいます。
現行の日本国憲法は完全無欠ではないとしても優れた平和憲法であり、特に前文は格調高い名文であると思います。これを教育勅語のような道徳もどきの作文に変えることは許してはいけません。
国民の生存権を守ることを国が放棄し始めていることを広く知らしめる必要があります。全国各地に子ども食堂がある事態は正常ではない、これを共助の美談にするのではく、国が義務を果たしていない状況であると多くの人が知る必要があります。この憲法リテラシーをどのように広めるのか考えつづけています。
杉下 麗
いつもありがとうございます。
今日の#7『家族と国家』も、改憲草案のオブラートで包んだ用意周到さに感心し、それが導く社会が、私の望むものとは逆を向いている故の恐ろしさを感じました。一方では、敗戦国日本の未来に向き合い、日本国憲法を掲げた先人たちの高い志に触れた気がして感動しました。今は、草案の浅さと薄さに怒りすら覚えています。この思いを具体的な”動き”に繋げていかないと。手遅れは嫌です。個々の心の傷(戦後、どれだけの人が、口をつぐんで行動しなかった自分を責め続けたことか…)になって長く苦しむことにもなりかねないし、”後悔”や”反省”は意味がないとも思います。どう行動していけばいいのでしょう・・・
日本の構造的な特徴を知ると、より明確に見えてくるものがありますね。
「資格と場」は大変参考になりました。ただいまの感覚とはずいぶんずれているなと感じるところもあり、それが何によってもたらされたのかを考えることも必要だと思います。
もう一度プレゼン資料を見返して、その辺を考えてみます。
吉野俊行
日本国憲法は、権力者が愚かなことをしないように作られているのに、自民党をはじめとする国会議員たちは意味を理解しないまま改憲へと突き進んでいる。絶望的になる。亡命すると思っても、中々出きることではない。
今回は15分ほど遅刻したので最初の部分を聞き逃したこともあって集中するのが難しかったため、送っていただいた資料とまだらな受講記憶だけで復習と宿題をしたあとの感想です。勘違いがあれば指摘していただきたいです。勘違いをそのままにしておきたくない、と今強く感じています。
改正案にある「家族が互いに助け合う」ということに、私は違和感は持ちません。ただ、それが「国家を形成する」と続くところには大いに違和感を感じます。私が親兄弟や自身の子供達と助け合うのは、あくまでも私のためです。国家のためになんて思ってやっていません。私が家族を頑張るベクトルは、国の方を指していません。親兄弟子供達それぞれへ、そして自分自身へ、です。 私の矢印は向きが違う。
「良き伝統を末長く子孫に継承するため」にもやってません。素晴らしい文化や伝統は、引き継ぐ意志のある人が、繋いでいけるところまで続いていく・続かないという状態が自然だと思うので、そんな叙情的な文章でわざわざ憲法に書くことなのかな、と不思議でなりません。 だから、改正案には反対です。
宿題になっていたいくつかの判例について調べました。私には難しい言葉や表現があってきちんと理解できていないと思うので感想文止まりの回答になります。
これまでに、日常で感じた違和感や困りごとを声に出した人たちがいて、それをきっかけに論議され制度の見直しなどが行われてきたということを知って、今にない個人の強さみたいなものが以前はあったこと、今はどうだろうかという恥ずかしさのような感覚が湧きました。
読んでいて自分なりに気づいたことは、憲法に記された文章がいかに巧みなんだろうということです。
すっとは理解できない言葉の中にはとてもたくさんのことが内包されていて、解釈次第でたくさんの救済が可能だしその逆にもなり得る。形をもたない憲法自身が、自由で力強いものなんだなと改めて習ったように思いました。
だから余計に、叙情詩の憲法が優しい雰囲気を纏って私達をやんわりときつく縛るかもしれないことがどんなに恐ろしいことかを知りました。
ど田舎で生まれ育ったので、「イエ」については書ききれないものがあります。自身の地域や昔のことを省みて思い当たったことは、私の実家は祖父母と親と子という集団だったけれど、時にはそれぞれが自分のために意見をぶつけ合う、個人の集まりだったなあということでした。個性的で毛色の違うとんでもない大人達に囲まれたことは、あの僻地で育ったけれど幸運だったと思います。
やはり私には自習だけでは厳しいものがあるので、解説を聞き習うのが自分には必要だなと感じます。録画でちゃんとおさらいしないといけないです。 ありがとうございました。
書籍「タテ社会の人間関係」の資格と場の考え方が、ビジネスの学校で習ったファミリービジネスにも当てはまるのではないかと思いました。近江商人は男の子よりも女の子が生まれると喜んだ、理由はボンクラ息子が育つ可能性があるので優秀な入り婿の方がより良い後継ぎを選ぶことができるから、という話を聞きました(私自身は実際の文献やインタビューをしたことはないのですが)。同じくファミリービジネスが脈々と続くイタリアを例に、資格と場に当てはめた話をご存じの方がいたら教えていただきたいです。 宿題と言われていたように、実際に自分で改憲案を見比べたり判例を見たり、これまでの回の知識をもとに自分なりに考える内容になってきたので、動画で見返しながら調べてみたいと思います。
ns
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