【Caitlin’s】ガザで、パレスチナ人は浄化され続けている

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ニュースの焦点が、ウクライナからガザへ、ガザからイランへ、イランからホルムズ海峡へ、ホルムズ海峡からレバノンへと移っていると見る人も少なからずいるかもしれない。しかし、事実はすべてずっと続いている。

ケイトリンさんは、パレスチナに何が起きてきたか、何が現在起きているか、そして何が起きようとしているかを絶え間なく書き続けている。蚊帳の外の評論家としてではなく、自分がその一部である人類の問題として、何を知るべきなのか、何を考えるべきなのか、いかなる行動を起こすべきなのか、なんの罪もない大量のこども、女性、若者から老人まで一般市民が殺され、性的に陵辱され、生きたまま焼かれ、強制的に餓死させられている事実を知りながら、何もできず病んでしまう自分の心にどう対処するべきなのかをケイトリンさんは書き続けている。

今回の記事で、ガザの現在及び非常に近い将来を彼女は冷静に俯瞰して書いている。だから、

「ガザっていったいどうなったの?」

と少しでも思う人は読まれることを推奨したい。彼女がよく使う皮肉や熱い風刺的表現は抑えられ、とてもストレートで分かりやすい。全訳は最後に付す。

以下では、まず予備知識として必要だと思われる事項について解説を加える。

目次

  1. [解説]
    • ◾️「平和」「人道」「自由」──言葉のナラティブ
    • ◾️平和評議会(Board of Peace)
    • ◾️アデルソン(Adelson)
    • ◾️民族浄化(Ethnic Cleansing)
    • ◾️シン・ベト(Shin Bet)
    • ◾️エジプト・シナイ半島
    • ◾️ラファ(Rafah)
    • ◾️人道都市(Humanitarian City)・人道シェルター(Humanitarian Shelters)
    • ◾️自由移動計画(Plan for Free Movement)
    • ◾️「53% → 70% → 100%」
  2. [和訳]ガザで、パレスチナ人は浄化され続けている

[解説]

◾️「平和」「人道」「自由」──言葉のナラティブ

ケイトリン・ジョンストンは、この記事で「平和評議会(Board of Peace)」「人道都市(Humanitarian City)」「人道シェルター(Humanitarian Shelters)」「自由移動計画(Plan for Free Movement)」といった名称を繰り返し取り上げている。一見すると、それぞれ別の政策や組織の名称に見える。

しかし彼女は、これらを個別の出来事とは見ていない。

共通しているのは、いずれも民族浄化という一語で丸め込まれるパレスチナ人の虐殺、陵辱、追放、強制餓死といったイスラエルの行為を「住民の管理」や「移送」という言葉に転換した上で、それをさらに、「平和」「人道」「自由」といった肯定的な言葉で偽装していることである。

つまり、政策そのものを変更しているのではなく、その政策の見栄えだけを変えるナラティブの政治――それが、この記事を貫くケイトリンの問題意識である。

◾️平和評議会(Board of Peace)

平和評議会(Board of Peace)は、トランプ政権が提唱した、ガザ停戦後の統治を国連ではなく米国主導で管理するための新たな国際的枠組みである。

しかし、この組織が議論を呼んでいる最大の理由は、その任務そのものではない。

問題の核心は、ガザのような国際社会全体に関わる重大な問題を、本来中心となるべき国連の枠組みではなく、新たに設けられた別組織で運営しようとしている点にある。

つまり、国連が存在するにもかかわらず、実際の意思決定や資金配分、治安管理、復興計画などを、米国主導の「平和評議会」へ移していく構想である。そのため、多くの論者は、この構想を国連中心の戦後国際秩序を「置き換える」のではなく、「迂回する」試みとして捉えている。

日本でも2026年、高市政権が「国民会議」を構想した際、本来は国会で議論すべき事項を政府が設けた別組織へ移そうとしているのではないかとの批判が起きた。

当時、政府は、本来であれば国会で議論されるべき消費税減税や給付付き税額控除を含む税・社会保障制度改革について、「国民会議」という新たな会議体を設けて検討を進めようとした。これに対し、「国会を迂回する仕組みではないか」「参加者を政府が選ぶ会議へ実質的な意思決定を移すのか」といった批判が野党などから相次ぎ、政府はその後、名称や位置づけを微妙に変更していった。

もちろん、「国民会議」と「平和評議会」は目的も規模もまったく異なる組織であり、同一視することはできない。
しかし、既存の制度を正面から廃止するのではなく、その外側に新たな組織を設け、そこへ実質的な権限を移していくという統治手法には共通する構造が見られる。

ケイトリン・ジョンストンがこの記事で「平和評議会」という名称をあえて取り上げているのも、この点にある。彼女は、この組織を単なる復興機関ではなく、国連を迂回しながら、ガザ住民の管理や移送を制度化する新たな統治装置として機能する可能性がある、と見ているのである。

◾️アデルソン(Adelson)

アデルソン家とは、故シェルドン・アデルソンと妻ミリアム・アデルソンを指す。二人はアメリカ共和党、とりわけドナルド・トランプ、そしてイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフを支える最大級の政治資金提供者として知られる。

シェルドン・アデルソンは生前、共和党に数億ドル規模の献金を行い、トランプ政権誕生の重要な資金源の一人だった。死後もミリアム・アデルソンがその役割を引き継ぎ、2024年大統領選でもトランプ陣営への最大級の献金者となった。

また、夫妻が所有する『Israel Hayom』は、イスラエル最大級の日刊紙であり、「ネタニヤフ寄り」の代表的メディアとして知られている。

したがって、ケイトリン・ジョンストンが単に「Israel Hayom」と書かず、“The Adelson-owned pro-Netanyahu outlet Israel Hayom” と書いたのは偶然ではない。彼女が読者に伝えたいのは、

「これはイスラエル政府を批判するメディアの推測ではない。トランプ政権・ネタニヤフ政権に最も近いメディア自身が報じている。」

という点である。

◾️民族浄化(Ethnic Cleansing)

「民族浄化(ethnic cleansing)」という言葉は、1990年代の旧ユーゴスラビア紛争を通じて世界中に広まった。当時、この言葉は国際世論を動員するうえで極めて大きな役割を果たし、後には戦争広告代理店による世論形成やメディア戦略の象徴的事例としても論じられるようになった。そのため、この言葉には今日でも、単なる事実の記述ではなく、強い政治的・感情的意味合いを読み取る人が少なくない。

ケイトリン・ジョンストンがそのことを知らないとは考えにくい。彼女は、そのような歴史的背景を持つことを承知した上で、あえて「民族浄化」という言葉を用いている。

その理由は、彼女がガザで進行している事態を「イスラエルとハマスとの戦争」とは見ていないからである。

彼女は、2023年10月以降に繰り返し報じられてきた、

  • ガザ住民をシナイ半島や第三国へ移住させる構想、
  • ラファへの「人道都市」建設計画、
  • 「自由移動計画」への名称変更、
  • 「平和評議会」の下での「人道シェルター」構想、
  • ガザ地区に対するイスラエルの実効支配地域の拡大

を、それぞれ独立した出来事ではなく、一つの連続した政策として捉えている。

その見方に立てば、軍事行動の目的はハマスとの戦闘ではなく、パレスチナ人をガザから排除し、その土地の支配構造を恒久的に変えることになる。

だから彼女は、「戦争(war)」ではなく、「民族浄化(ethnic cleansing)」という言葉を選ぶのである。

この記事の最後で彼女が、「これは戦争ではない。民族浄化作戦である。」と断言しているのは、単なるレトリックではない。「戦争」という言葉自体が事態を誤認させるナラティブであり、実態を表す言葉としては「民族浄化」の方が適切だ、というのが彼女の一貫した主張なのである。

日本語の「民族浄化」という言葉には、どこか隠蔽臭が漂う。現実の生々しい恐ろしさを四つの漢字に閉じ込めることによって消臭している。

民族浄化とは何か。或る一つの民族の存在を、その土地から消去することだ。「浄化」とは、殺し、辱め、追放し、飢えさせ、住めなくし、その民族がその場所に存在しない状態を作ること。それが現実の「民族浄化」だ。

日本人を民族浄化しようとする者が現れるまで、我々はその本当の意味を理解できないのかもしれない。

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