【本の旅】ノーベル文学賞について

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この記事は、【本の旅】 ハン・ガン『光と糸』 − ノーベル賞受賞記念講演全訳の補足として読んでいただけると幸いです。

ノーベル賞・オリンピック・国連の三つは、世間知らずでお人好しの日本人が信仰する三種の神話と揶揄されてきた長い歴史がある。それぞれ一理も二理もある話ではあるが、十把一絡げの冷笑も恥ずかしい話であるので、ここではそういう話を書くつもりはない。

今日発作的にXとThreadsとBlueskyとMastodonに投稿したポストに次のようなことを書いた。

ふと思ったことで直ぐ忘れてしまうと思うので、その続きを書いておくことにした。

Contents

ノーベル賞

まずノーベル文学賞は、ノーベル賞の6分野の一つだ。6分野それぞれで選考委員もその過程も違うので、ノーベル賞全部まとめて、ああだこうだと一色で塗りたくると、八百屋のおっさんの戯言になってしまう。

6つの分野のノーベル賞をざっと見渡すために、それぞれの授賞式会場と選考機関を下に貼っておく。

物理学賞
授賞式会場:スウェーデンの「ストックホルム・コンサートホール」
選考機関:スウェーデン王立科学アカデミー。

化学賞
授賞式会場:スウェーデンの「ストックホルム・コンサートホール」
選考機関:スウェーデン王立科学アカデミー。

生理学・医学賞
授賞式会場:スウェーデンの「ストックホルム・コンサートホール」
選考機関:カロリンスカ研究所。

文学賞
授賞式会場:スウェーデンの「ストックホルム・コンサートホール」
選考機関:スウェーデン・アカデミー。

経済学賞(アルフレッド・ノーベル記念経済学賞)
授賞式会場:スウェーデンの「ストックホルム・コンサートホール」
選考機関:スウェーデン王立科学アカデミー。

平和賞
授賞式会場:ノルウェーの「オスロ市庁舎」
選考機関:ノルウェー・ノーベル委員会。

物理学賞、化学賞、経済学賞の三つがスウェーデン王立アカデミーによって選考され、生理学・医学賞がカロリンスカ研究所に、文学賞がスウェーデン・アカデミーによって選ばれる。そして、平和賞だけがスウェーデンではなく、ノルウェーのノーベル委員会によって選ばれる。

ノーベル平和賞の特殊性

平和賞だけがノルウェーで選考され、授賞式も、スウェーデンではなく、ノルウェーのオスロで行われる。これはアルフレッド・ノーベルさんが遺言で、平和賞のみノルウェーで授与しろと言ったからなのだが、その理由は遺言にははっきり書かれていない。

その当時、スウェーデンとノルウェーは連合国家を形成しており、ノルウェーは平和外交に力を入れていたことや、スウェーデンは軍事的な影響力が強かったので、ノーベルさんはノルウェーの方が平和賞にふさわしいと考えた可能性が考えられている。ともかく、ノーベルさんは平和賞をノルウェー議会が選考することを望んだ。

ノルウェー・ノーベル委員会

但し、ノルウェー議会が平和賞受賞者を直接選考するわけではなく(立法府には立法府の仕事があるだろう)、選考を担当するノルウェー・ノーベル委員会(Norwegian Nobel Committee)というものが作られた。

この委員会は、ノルウェー議会が任命した5名の委員で構成される。委員会の構成は、ノルウェー議会の政党間の比例代表制に基づいて選出されるので、議会の各政党の勢力に応じて委員が割り当てられる。委員の任期は6年で、再任が可能。

委員には、現役の政治家も含まれる場合があるが、政治的な影響を避けるため、政治から退いた人物が選ばれることが一般的だという。

ノーベル平和賞の選考過程

1. 推薦の受付
世界中の特定の資格を持つ個人や団体(大学教授、議会議員、過去の受賞者など)から推薦を受け付ける。
推薦の受付締切は毎年1月31日。
2. ノーベル委員会の調査
ノーベル委員会が候補者を審査し、リストを絞り込む。
外部の専門家から意見を求める場合もある。
3. 最終決定
ノーベル委員会は、10月初旬に最終的な受賞者を決定し、発表する。
4. 授賞式
毎年12月10日、オスロ市庁舎で授賞式を行う。

オスロ市庁舎と書くと、なんかしょぼい建物をイメージするかもしれないけど、実際はかなり荘厳な建物だ。オスロは国際会議をよくホストする都市の一つだが、僕も年に一回か二回はニューヨークからオスロに行っていた。郊外にあるノルウェー軍の基地でトレーニングを受けたこともあったが、さっき気がついたのだが、偶然このnote のプロフページの背景にその時撮った写真を使っていた。

オスロ市庁舎の晩餐会に招かれた時、当然僕も同僚たちも、みんなシワのないスーツやシャツを探し、ネクタイをしていそいそと出かけて行ったのだが、アングロサクソンの一人だけ、短パンとTシャツで登場したのは、みんな、おもクソわろた。そういう奴が国連にはたまにいる。そいつの上司がフランス人の女性で、その短パン・アングロサクソン男を🐛を見るような目で見ていたのも懐かしい思い出だ。但し、この大ホールに200人くらいの招待客がいたので、誰も何も気にしてなかったと思う。そんなノーベル平和賞の授賞式が行われる場所がここ↓。

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オスロ市庁舎

ノーベル平和賞のメッセージ性

話が逸れたが、ノーベル平和賞の選考を行う人たちの構成や、選考過程を見れば、彼らの”政治”がノーベル平和賞に反映されるのは当たり前だろう。佐藤栄作が受賞した時(1974年)に腰を抜かした日本人は少なくないだろうし、オバマが受賞して(2009年)鼻血を出した人も海外にはいるかもしれない。

そもそも「賞」というのはメッセージを発する一つの形なのだから、選考する人の意図が滲み出ていると指摘して、したり顔になっているよりも、「賞」から発せられるメッセージの吟味でもする方が少しは人生の足しになるだろう。

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地域別のノーベル平和賞の受賞と推薦

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