この本については、以前、YOSHILOG NOTE に少し書きました。それを下の1. YOSHILOG NOTE に書いたことに再録しました。
最近、note で始めたRay of Letters というメンバーシップのメンバー限定記事として、2. 妾の「戦い」を追加しました。Ray of Lettersのプランに参加すると、読むことが出来ます。
『妾の半生涯』福田 英子著
1. YOSHILOG NOTE に書いたこと
明治史関係の本を読んでいると、福田英子という名前にちょくちょく出会う。女性解放運動の先駆者の一人という位置付けが一番スタンダードで、その次に自由民権運動、社会主義運動に関わったことが、”付け足される”。青空文庫にこの人の自伝みたいなものがあったので、ダウンロードして読み始めた。
誰かの妾(めかけ)だったから『妾の半生涯」なんてタイトルを付けたのかと思っていたが、全然違った。この「妾」は「わらわ」と読むことを発見した。調べてみると、女性が一人称をへりくだって言う時に使うらしい。もう一つ書いておくと、この「半生涯」は「はんしょうがい」ではなく、「はんせいがい」と読むのが正しいらしい。
彼女が生まれたのは1865年だから、まだ江戸時代だ。新しい国を作ろうとする人々に溢れていた時代に彼女は生きた。やがて「朝鮮人民による独立の闘いと日本国内の自由民権運動を結びつけて両国にまたがる一種の民主主義革命をめざし」、爆弾を運搬しているのが見つかって逮捕される。彼女は「東洋のジャンヌ・ダルク」と称されたらしいが、今なら、ただのテロリスト扱いだろう。逮捕され、大阪未決監獄で取られた非常に長い調書が、この本にまるごと引用されていた。その当時の彼女の考えが率直に書かれている。
もともと私は、我が国で国民の権利が拡大されず、そのために女性たちが古くからの悪習に慣れ、卑屈に男性の奴隷として甘んじていることを憂えていました。女性たちは、生まれつき自由であるべき権利があることを知らず、自分にとってどんな悪い制度や法律があろうとも、それを気にせず、ささやかな快楽に満足し、立派な衣服や贅沢な食事を人生最大の幸福や名誉としか思っていません。彼女たちは、物事の本質を理解しようともせず、ましてや国家の繁栄や衰退については考えることすらありません。これが日本の多くの女性たちの現状であり、自ら卑屈に成り下がっているようです。政治に関することは女性には無関係だと思い込み、全く関心を持とうともしません。
福田英子の大阪未決監獄述懐書
この時、彼女は、19歳。時は、前世紀ではない、前々世紀の明治18年(1885年)。彼女が描写している明治の日本と、今の日本と何か違うだろうか。日本は前々世紀と何も変わってない。もうホントになんとかしないといけない。これに続いて、彼女はこんなことを言っている。
このように女性たちが無気力であるのは、女子教育が不完全であることと、民権が拡大されていないために、自然と女性にもその影響が及んでいるからです。私は、民権の拡大を目指す同士たちと協力し、自由民権を広げるために力を尽くそうと決意しました。これこそが私の望みであり、目的です。もし女性の権利が拡大され、男女が平等な地位に達すれば、三千七百万の同胞姉妹がこぞって国政に参加し、国が危機に陥った時にも無関心でいられることはなくなるでしょう。自分たちにとって害となる悪い制度や法律を取り除き、男性と共に文化を発展させ、物事の本質を理解できるようになれば、愛国の情はますます強くなるだろうと願っているのです。
福田英子の大阪未決監獄述懐書
彼女は、自由民権運動に没入し、社会主義運動に没入し、キリスト教に没入する。しかし、基本は、当時の他の多くの日本人同様、彼女を突き動かすのは愛国の情だった。彼女の教育は15歳の時点で終わっている。しかし、現代日本の19歳の女性が警察に逮捕されて、理路整然とあれほどのことを言えるだろうかと考えると、現代日本人の劣化はもはや隠しようがない。
これは自伝であり、理論書でもなんでもないので、彼女の思想については彼女は詳しくは書いていない。焦点が置かれているのは、彼女の生活だ。彼女の生活に現れる女性として生きることの不遇に読んでいるだけで憤りを感じる。クズ男たちの生態は現代日本とまったく変わっていない。
全部で14章から成っている。最初の4章を読んだ。平安時代の古文を読むわけでないので、全然分からないことはないが、文語体で書かれているので、すらすらと読めない。ChatGPTに少しずつ現代語に訳してもらって読んでいる。最後には現代語による全文訳が出来上がる。捨てるのももったいないので、なんらかの形で公開しようかと思っている。
2. 妾の「戦い」
歴史書で過去の話を学んでいると、その当時の人々は実際どんなことを毎日考えて、感じて、笑ったり、泣いたりして生きていたのだろうかということが常に大きな謎として残り続ける。とは言っても、『オデュッセイア』とか、『源氏物語』を読んで味わいたいとかそういう高尚な話ではない・・・
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