【Overseas-51】高市政権は本当に無能なのか2/2(外交篇)

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これは、【Overseas-50】高市政権は本当に無能なのか1/2(内政篇)の続編です。
約1万2千字あるので、要注意です。

目次

  1. 2026年2月28日に起きたこと
  2. 米・イスラエルによるイラン攻撃
  3. イランによる報復
  4. 国連安保理緊急会合(10112th meeting)
  5. ホルムズ海峡通航の現状
  6. 通航保証を取得した国:
  7. 通航保証の交渉中/拒否の国
  8. 外交
  9. 2025年6月13日−同月24日:12日間戦争(Operation Rising Lion)ー米国1回目の裏切り
  10. 2月28日:米・イスラエル、イラン攻撃開始(Operation Epic Fury)ー米国2回目の裏切り
  11. 2月28日:国連安保理緊急会合(10112th meeting)
  12. 3月18日:日本の海上回廊提案
  13. 3月19日:共同声明
  14. 3月21日:イラン・アラグチ外相の日本へのオファー
  15. 3月22日:茂木外務大臣、イランとの協議を否定
  16. 3月24日:アメリカ、15項目停戦提案をイランに通告
  17. 3月25日:イラン、5項目の停戦条件を公表:
  18. 3月26日:イランの友好国リスト
  19. 3月29日:4カ国外相会議の「コンソーシアム」案
  20. 4月2日:スターマー首相の40カ国連合
  21. 日本船舶の通航
  22. 1隻目の日本関連船舶:
  23. 2隻目の日本関連船舶:
  24. それでは、高市政権は無能なのか

2026年2月28日に起きたこと

米・イスラエルによるイラン攻撃

2026年2月28日朝(テヘラン時間で午前8時頃〜9時40分頃)、イスラエルと米軍の合同作戦(コードネーム: Operation Epic Fury / Roaring Lion)が始まった。
イスラエルと米軍は、イラン各地の軍事施設・核関連施設・政府施設を空爆。最高指導者アリー・ハメネイ師(Ali Khamenei)は標的となり死亡。イラン革命防衛軍(IRGC)司令官や国防相など他の高官も死亡。民間被害(例: 南部ミナブの小学校への攻撃で168人が殺された)も報告された。

参考:【検証】イランの学校と近隣の軍事施設は攻撃を複数回受けていた……人工衛星画像から明らかに

イランによる報復

同日2月28日中に、イラン革命防衛隊(IRGC)などがミサイル・ドローン攻撃を報復を開始。対象は:
•  イスラエル(テルアビブなど、数百発の弾道ミサイルが発射されたとの推定)。
•  湾岸諸国の米軍基地・施設(バーレーン、ヨルダン、クウェート、カタール、サウジアラビア、UAEなど)。 
攻撃は「自衛権行使」として位置づけられ、空港・軍事施設・港湾などを標的としたもの。

国連安保理緊急会合(10112th meeting)

イラン政府は、国連安保理の緊急会合を要請し、攻撃の始まった同日午後(ニューヨーク時間4pm EST頃)に国連安保理緊急会合(10112th meeting)が開催された。会合中も状況は流動的で、報復攻撃が進行中または直前に始まった文脈で議論された。この会合での出席者(常任/非常任理事国・オブザーバー・当事国)の意見表明及び、この場にいなかった国の様々な形での声明は、その後の各国の外交の軌道を条件づけている。

この緊急会合の議事録を見れば、各国が非常に慎重に言葉を選びながらも、「アメリカ・イスラエルを非難する/非難しない」、「イランを非難する/非難しない」を明確に打ち出す国もあれば、それほど明瞭ではなくても、ギリギリの「色合い」を出している国もあるのが分かる。

アメリカ・イスラエルに対する態度とイランに対する態度を形式的に2択にしてしまうと(本当は非難と無非難の間はグラデーションのようではっきり分け難い)、出席国は、以下のような選択肢の中に追い込まれる。この選択は、国際法上の判断であるとか、道義的な判断とは全く独立した政治的な計算によって選ばれるだろう。国際法とか道義とかは、その国が政治的にどの選択肢を選ぶか決定した後に、都合が良ければ使われると考えた方が良い。

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この簡単ではない選択ーつまり第一に政治的なポジション取り、それに加えてもちろん国際規範システムの尊重や、道義的な考慮とのジレンマの存在ーを各国はともかく行ってきた。もちろん高市政権もその一つであり、そのポジションは明確に世界に発信されている。この選択がどういう影響を及ぼしたのか/及さなかったのかは、次節以降の「ホルムズ海峡の現状」「外交」「日本船舶の通航」の後に、もう一度振り返る。


ホルムズ海峡通航の現状

まず現状を見てみる。これまでにホルムズ海峡の安全な通航保証を取り付けた国は、報道で分かる限りでは以下の8カ国ある。表に出ていないケースもあるかもしれないし、これを書いている時点でも増えているかもしれないので、これは決して完全なリストではない。

通航保証を取得した国:

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通航保証の交渉中/拒否の国

上記のようにイランから安全な通航保証を既に取り付けた国以外にも現在交渉中の国もある。交渉を拒否する国もある。

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外交

各国によるイランとの個別交渉以外にも多国間の外交は活発に動いている。現在のイラン戦争とそれに伴って始まった世界的なエネルギー危機に至るまでの外交のキーになる動きだけを時系列に従って整理した。

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2025年6月13日−同月24日:12日間戦争(Operation Rising Lion)ー米国1回目の裏切り

▪️交渉の状況:
2025年4月頃から米国(特使Steve Witkoff主導)とイラン(外相Abbas Araghchi)の間でオマーン仲介の間接核交渉が複数回(5〜6ラウンド)行われていた。トランプ大統領はイランに60日以内の合意を求め、核プログラム制限を巡る協議が続いていた。交渉は「建設的」とされ、次のラウンド(6月15日予定)も設定されていた。
▪️攻撃(1回目の裏切り):
2025年6月13日、イスラエルがイラン核施設(Natanz、Fordow、Isfahanなど)・軍事拠点・指導者暗殺を目的とした大規模空爆(Operation Rising Lion)を開始。米国も数日後に核施設への追加攻撃に参加。イランは報復としてイスラエルと米軍基地(カタールAl Udeid基地など)へミサイル・ドローン攻撃。死者数百人規模の激しい戦闘となり、6月24日に米国・カタール仲介の停戦で終了。
▪️結果:
攻撃直前まで交渉が活発だったが、交渉中の6月13日のイスラエル・米国による突然の攻撃により、次回会合が無期限延期。イラン側・オマーン仲介者は「交渉を欺瞞的に利用した」と批判。国際的には「米国が交渉を並行しながら軍事オプションを取った」として、アメリカの外交の信頼失墜を招いた。

2月28日:米・イスラエル、イラン攻撃開始(Operation Epic Fury)ー米国2回目の裏切り

▪️交渉の状況:
2026年2月上旬(2月6日頃)から再びオマーン仲介の間接核交渉が再開。2月26日頃まで複数セッションが行われ、オマーン外相は「建設的で進展あり」「核物質備蓄ゼロの方向で合意目前」と公表。米国側も一部で「良い話し合いだった」と評価。
▪️攻撃(2回目の裏切り):
2026年2月28日、米国・イスラエルが共同で大規模奇襲攻撃(Operation Epic Fury)を開始。イラン最高指導者アリ・ハメネイ師、国防相・IRGC司令官など要人暗殺、核・ミサイル施設・軍事拠点への空爆を実施。イランは即時報復としてイスラエル・米軍基地・湾岸諸国を攻撃(民間被害も発生)。これが現在に続く。
▪️結果:
攻撃は2月26日頃の会合の終了直後に実行され、オマーン外相は「進行中の真剣な交渉を台無しにした」と明確に非難。イラン側は「交渉を欺くための時間稼ぎだった」と主張。米国専門家や欧州諸国からも「2度目(2025年に続き)」として「外交を破壊する前例」「他国が今後米国と交渉するのをためらう」と強く批判

2月28日:国連安保理緊急会合(10112th meeting)

イランはアメリカ・イスラエルによる攻撃の直後、国連安保理の緊急会合を即座に要請。同日午後4時から始められた。
▪️グテーレス国連事務総長はイランへの米・イスラエルの攻撃、およびイランによる湾岸諸国への報復攻撃をいずれも非難し、即時停戦と外交交渉への復帰を求めた。テヘランを含む約20都市が攻撃され、ミナーブの女子校で少なくとも85人が死亡したと報告。
▪️米国は作戦の正当性を主張し、イランの核開発・ミサイル・代理勢力支援が脅威であるとして、「断固たる行動」を擁護した。
▪️イスラエルは「存亡の危機」への対応として軍事行動を正当化。イランの核施設・弾道ミサイルサイト・代理勢力網の破壊を目標と説明した。
▪️イランは米・イスラエルの攻撃を「明白な侵略行為」と非難し、国連憲章第51条に基づく自衛権の行使だと主張。安保理に対して即時停止を求めた。
▪️ロシア・中国はともに米・イスラエルの攻撃を侵略と非難し、外交的解決への復帰を訴えた。
▪️フランス・英国・デンマーク・ラトビアなどはイランの湾岸諸国への攻撃を強く非難しつつ、de-escalation(緊張緩和)と外交交渉の再開を求めた。
▪️湾岸協力理事会(GCC)諸国(バーレーン代表が代読)はイランの攻撃を主権侵害として強く非難した。

参考:S/PV.10112

3月18日:日本の海上回廊提案

▪️提案の概要
日本政府(特に茂木敏充外相)は、国際海事機関(IMO)に対して、ホルムズ海峡封鎖によりペルシャ湾内に足止めされている船舶と船員の安全確保を目的とした「安全な海上回廊(safe maritime corridor)」の設置を提案している。目的は、
 ・ペルシャ湾内に留め置かれている約2万人の船員(seafarers)と数百隻の船舶(日本関係船舶約45隻(3月時点))の安全な退避・脱出を支援。
 ・足止め船舶への水・食料・燃料などの必需品供給を確保。
 ・将来的にはホルムズ海峡での安全な通航枠組みの確立を目指す(即時的な全面再開ではなく、人道的・緊急的な回廊)。
 ・初期提案:2026年3月18日頃(日本を含む複数国:バーレーン、UAE、パナマ、シンガポールなどと共同でIMOに提出)。  
 ・40カ国連合オンライン会合(4月2日)でも、茂木外相が改めて説明し、参加国に協力を呼びかけ。日本がIMOで主導的に提案していることを強調。
 ・IMOは、この提案を支持する方向。IMO事務局長は、イランを含む関係国に協力を要請。
▪️現在の状況と限界
•  イランの協力が得られるかが最大の課題で、設置時期は未定。
•  日本政府は軍事的な直接介入(自衛隊派遣など)は現時点では否定。
•  並行して、日本に関係する船舶の一部はイランとの個別調整でホルムズ海峡を通過する事例も出始めている(商船三井が関連する船舶)。

参考:Countries propose safe corridor to free 20,000 seafarers stranded in Gulf
Japanese, French and Omani vessels cross the Strait of Hormuz

3月19日:共同声明

英国、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、日本の6カ国の首脳はが、3月19日にホルムズ海峡に関して共同声明を発表した。その後、カナダ、韓国、ニュージーランド、デンマーク、ラトビア、スロベニア、エストニア、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、 チェコ、ルーマニア、バーレーン、リトアニア、オーストリア、UAE、ポルトガル、トリニダード・トバゴ、クロアチア、ブルガリア、コソボ、パナマ、北マケドニア、ナイジェリア、モンテネグロ、アルバニア、マーシャル諸島、チリ、モルドバ、ギリシャ、ソマリア、スロバキアが参加した。

主な内容:
1.  イランへの強い非難
•  湾岸での無武装商船に対する攻撃
•  石油・ガス施設など民間インフラへの攻撃
•  ホルムズ海峡の事実上の封鎖(de facto closure)
これらを「最も強い言葉で(in the strongest terms)」非難。
2.  イランへの要求
•  脅迫行為、機雷敷設、ドローン・ミサイル攻撃、その他商業船舶の航行妨害を直ちに停止するよう要求。
•  国連安全保障理事会決議の順守を求める。
3.  自らの姿勢
•  ホルムズ海峡の安全な航行確保に向けた「適切な取り組み(appropriate efforts)」に貢献する用意があることを表明。
•  エネルギー市場の安定化に向けた措置を講じるとした。
4.  追加のポイント
•  航行の自由が国際法の基本原則であることを強調。
•  他国による安全確保に向けた準備作業を歓迎。

これが、後日(4月2日)の英国主導の40カ国連合オンライン会議の基盤となった。日本は積極的に参加している。

参考:European nations, Japan to join ‘appropriate efforts’ to open Hormuz Strait
Joint statement from the leaders of the United Kingdom, France, Germany, Italy, the Netherlands, Japan, Canada and others on the Strait of Hormuz: 19 March 2026

3月21日:イラン・アラグチ外相の日本へのオファー

3月21日、イラン外務大臣 アッバース・アラグチ が日本の共同通信の電話インタビューで、日本を名指しして以下の発言をした。
•  「日本関連船舶のホルムズ海峡通過を認める用意がある」
•  「日本側と既に協議に入っている」
•  「敵対国(米国・イスラエルなど)以外で、通過を希望する国とは調整(coordination)すれば安全な通航を提供できる。日本のような国も該当する」
•  「海峡は全面封鎖していない。敵の船舶に対してのみ封鎖している」と主張。
▪️この発言は、Al Jazeera、Bloomberg、Anadolu Agencyなど国際メディアでも大きく報じられた。アラグチ外相は、日本を「伝統的な友好国(traditionally friendly nation)」として位置づけ、通過のための個別調整を促すニュアンスで言及している。

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