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以下は、2025年5月29日配信の「Judging Freedom」におけるアンドリュー・ナポリターノ判事とジョン・ミアシャイマー教授の対話の日本語訳です。
原題は、”Prof. John Mearsheimer : Is Europe a Threat to Netanyahu?”(ヨーロッパはネタニヤフにとって脅威なのか)とかなり限定的なものですが、実際に話されてる内容は、非常に多岐に渡っています。いくつかの段落に分けて、小見出しをつけたので、全体像を把握したい場合は、下の目次を参照してください。
目次
ドイツのメルツ首相の発言
ウクライナ軍の戦場での苦境
プーチン大統領暗殺未遂事件
ネタニヤフの嘘
被占領民の武装抵抗権
米国人医師の証言1
誰がジェノサイドを止めれるのか?
イラン攻撃の目的
米国人医師の証言2
イスラエルの最終目標
以下は各節の概要です。
【ドイツのメルツ首相の発言】
最初にドイツのメルツ首相の演説の一部の動画が流されます。ヨーロッパの好戦派の態度がよく現れてます。
【ウクライナ軍の戦場での苦境】
それに続き、どっちが勝つとか情緒的な応援団の話ではなく、超リアリストのミアシャイマー教授がウクライナの戦場の現実をデータを使って説明します。
【プーチン大統領暗殺未遂事件】
次にプーチン大統領の暗殺未遂事件に二人は触れます。ここで、ミアシャイマー教授はトランプ政権のまとまりの無さを言及します。
【ネタニヤフの嘘】
その次が、ネタニヤフが、「Free Palestine(パレスチナに自由を)」を、 「Heil Hitler(ヒトラー万歳)」になぞらえた悪名高いスピーチの動画が流されます。この演説で、ネタニヤフは、今ではもはやシオニスト以外誰も信じなくなった嘘を滔々と繰り返します。
【被占領民の武装抵抗権】
ミアシャイマー教授が国際法上認められている被占領民の武装抵抗権について言及します。超リアリストのミアシャイマー教授は国際法に言及することが少ないのですが、やっと明確に「被占領民の武装抵抗権」について触れてくれました。これについては、下の記事に書いたので、関心のある方は、参照してください。

【米国人医師の証言1】
国連安保理でガザにボランティアで2回行ったアメリカ人の医師が証言をします。今回の対談では、その動画の一部が2回にわけて流されます。ミアシャイマー教授は彼の証言内容を既によく知っているものの、それでも言葉を失います。
【誰がジェノサイドを止められるのか?】
この悲惨な状況を誰が止められるのかに話は向かいますが、当然トランプの名前が出てきます。しかし、彼が身動き取れない状況であることをミアシャイマー教授は描写します。
【イラン攻撃の目的】
イランに戦争を仕掛けようとする米国内の好戦派とネタニヤフと、それに抵抗するトランプの内情がここでミアシャイマー教授によって説明されます。
【米国人医師の証言2】
上記の米国人医師の証言の結論部分の動画が流されます。この中で彼は7つの提言をします。ミアシャイマー教授はそのすべてに同意しますが、彼が言葉を失うのはこの時です。
【イスラエルの最終目標】
結局、イスラエルは、長期的に何を達成しようとしているのかを、ミアシャイマー教授が明確な言葉で描写します。パレスチナ人の皆殺しはその一貫における過程なのです。
では、どうぞ本文へ。
ナポリターノ判事:
皆さんこんにちは。「Judging Freedom」のアンドリュー・ナポリターノ判事です。今日は2025年5月29日、木曜日です。ジョン・ミアシャイマー教授に、このあとすぐにご登場いただき、ヨーロッパで最近起きている動きについてお話を伺います。それはウラジーミル・プーチンにとっての脅威となるのか? あるいはベンヤミン・ネタニヤフに対する抑止力となるのか?
ミアシャイマー教授、ようこそ。ご参加ありがとうございます。チャットルームである方がこんなことを言っていました。「ミアシャイマー教授は本物の“金”であり、他の知性は紙のお金に過ぎない」と。あなたのファンの一人がここであなたを見ていると伝えたかったのです。
ドイツのメルツ首相の発言
ナポリターノ判事:
この1週間で、ドイツのメルツ首相が「数週間以内にドイツはタウルス・ミサイルをキエフに送る」と発表しました。我々の軍関係者の中には、「それは軍事用語で“もう数週間前に送った”という意味だ」と言う者もいます。ウクライナによるこれらのミサイルの使用には地理的制限がないとされています。これによって、ドイツはクレムリンの見方では交戦国と見なされるようになるのでしょうか? あるいはNATO全体が交戦国と見なされるのでしょうか?
ミアシャイマー教授:
クレムリンの見方では、NATOはすでに交戦国と見なされています。そしてロシアの立場から見たとき、最も危険な国家は明らかにドイツではなく、アメリカ合衆国です。したがって、非常に重要な点において、これは大きな変化ではありません。正直に言って、ドイツ側が実際に何を言っているのか、私にはよく分かりません。彼らはメルツの発言を事実上撤回していますし、我々やドイツが本当にタウルス・ミサイルをウクライナに提供したのかどうかも不明ですし、近いうちに使用される見込みがあるのかどうかも分かりません。それは将来的にあるかもしれませんが、現時点では本質的な変化は見られません。
ナポリターノ判事:
これがメルツ首相の発言です。AIによる英語訳で、彼自身の声、もしくは彼の声を模したAI音声とされています。
メルツ(AI翻訳):ウクライナに供与される兵器について、もはや射程の制限はありません。イギリスからも、フランスからも、我々からも、そしてアメリカからも同様です。つまり、ウクライナは今や、自衛の一環として、ロシア国内の軍事拠点を攻撃したり、必要に応じて他の戦略的目標を狙ったりすることができるようになったのです。
つい最近まで、それは不可能でした。つい最近まで、極めて例外的な場合を除いて、それは実行されていませんでした。今は、それが可能なのです。我々の専門用語ではこれを「長距離射撃(long-range fire)」と呼びます。つまり、後方の軍事目標を攻撃できる兵器をウクライナに提供するということです。これが、ウクライナの戦争遂行における決定的かつ質的な違いです。
ロシアは都市や幼稚園、病院、介護施設を容赦なく爆撃し、民間人を標的にしています。ウクライナはそうしたことをしていません。そして我々は、それが今後も変わらないようにすることを非常に重視しています。
しかし、侵略者に対して自国領内だけで応戦するというのは、十分な自衛とは言えません。したがって、現在ウクライナによる自衛は、ロシア領内の軍事インフラに対しても行われているのです。
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