若手研究者、絶賛します。

日本で「学会」っていうと、なんか堅苦しい感じがある。もう30年くらい前ほんの数回出席しただけの印象だけど、なんかパッとしない。普段の大学の講義もそうだった。大学の先生の講義と独り言との境界線が限りなく曖昧な印象が残ってる。ホントに独り言だけで全時間使い切る哲学の先生もいた。

その頃は、多分、そういうのが学問の府、というような了解が先生と生徒との間にも、あるいは世間一般にも残っていたような気がする。

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(参考写真:演壇に立っているのは有島武郎氏らしい。)

先週、オーストラリアのメルボルンで、数十年ぶりに学会っぽいものに出席して一番驚いたのは、報告者のスタイルだった。

カッコいい!

出てくる人がみんなそうなのだ。これはいったいどういうことなのか?あの学者っぽい、もっさーとした雰囲気をかもし出す演者が一人もいない。全くあてが外れた。

これはひょっとして単に日本と海外との違いなのか、あるいは時代が変わったということなのか?同時期の日本と海外の学会を見たわけでないので、分からないが、多分原因は両方にあるのだろう。

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この二年半ほど、いろんなカンファレンスに行ったが、最近はほとんど行かなくなった。スピーチとかパネル・ディスカッションの依頼は一年に多分20回〜30回くらい来るけど、ほぼ全部断っている。

ブロックチェーンとか、クリプト関係のカンファレンスって、なんか聴衆もスピーカーも揃ってウェ〜い!ってのが多いのだが、聴き終わっても、一行か二行分くらい聞いてよかったと思えたらましな方で、結局何にも残らないことも珍しくない。

反対に、なかには一字一句書き起こして読み直したいと思うようなスピーチをする人もいるが、そういうのは大抵あとでYoutube に出てくるので、わざわざ会場に行く必要もない。

結局、何しに行ったのか分からない、と思うことが多くなり、行かなくなったのだった。

それよりも、もっと深刻な問題は自分が喋る立場の場合だ。まず普段から喋るのが嫌いな奴がパブリックでうまく喋れるわけがない。

スピーチの準備と言えば、内容ばかりに気が行ってしまう。が、パブリックで喋るなら、たぶん内容の重要性は半分以下で、いかに喋るか、どういう順序で、どこに間があって、どこにアクセントがあって、どこに笑いがあって、どこに落ちをつけて、どんなサウンド・バイトをどこに入れ込むかとか、そういうシナリオの方がはるかに重要だろうと思う。

自分には無理!

だから、行くのはやめた。

だったら、今回なぜ行ったんだ?それは学会だったから。自分の頭の中にある、あのもっさーとした学会のイメージがあったからだった。あれならパフォーマンス演説みたいなこと考えずに済むと思ったのだ。

甘かった。パフォーマンスやっとるやないけ!

確かに、ウェ〜い型パフォーマンスをする人は一人もいない。が、自分のイメージの学会とも違う。三日間の構成は、午前、午後の最初に大会議場で一つずつ基調報告があり、その合間に小さな部屋で四つの分科会が並行して行われ、出がらし系がやる基調報告はわりともっさりしてるのが多かったのだが(自分もその一人)、危機感を覚えたのは分科会の若手研究者達の報告だった。大学院生やポスドクの人たちが多かったのだが、これがみんなカッコいいのだ。

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(Arbi Chouikhさん。カナダで学ぶ、チュニジア人の大学院生。”Could Facebook Influence Municipal Elections? Tunisian Case Study”というタイトルで、フェイスブックの「アラブの春」へのインパクトを実証する研究だった)。

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(Rochelle Wilsonさん。オーストラリアの大学院生。話さなかったのでどこから来た人か分からない。”Building Trust Through Promises” というタイトルで、果たされなかった政治家の公約についての研究発表だった)。

たぶん、その時の自分の顔はへ〜とかほ〜って顔してただろう。そこで、

へ〜ほ〜理論!

について考えてみた。

・ストーリーがコンパクトにまとまってはっきりしている。あっち行ったりこっち行ったりしないのだ。僕の哲学の先生は行きっぱなしで、どこ行ったか分からなくなっていたのとかなり違う。

・ド派手なパワポで目潰し攻撃を放つ者がいない。ストーリーの補助としての役割をちゃんと果たして、聞いている人が今どの辺にいるのかが分かる。

・ハッキリ喋る。アクセントから判断して、たぶん英語を母語にしている人はいなかったと思うが、みんな話が明解だった。ちゃんと頭の中でリハーサルを繰り返していたと思われる。つまり、即興演奏ではなかった。

というわけで、とても気持ちいいカンファレンスでした。で、自分のは、どないやってん?という疑問が出てくるかもしれませんが、それは別に書こうかなと。コメントがLinkedIn に一つ出てたので、関心のある方はとりあえずそれでお茶を濁しておいてくだい。

LinkedIn で発見した僕のプレゼンに関するコメント

一つ残念なのは日本の優秀な若手研究者がやってこなかったこと。世界中から200本くらいの論文が集まって、その中から最終的に1割〜2割程度が選ばれて発表にこぎつけたそうです。準備に一年かかるそうだけど、年一回やってるので、こういうのに日本の学徒にも是非挑戦してほしいなと。

国連大学のポルトガルを本拠地にするE-Governance 研究部隊が戦略を練っています。毎年違う国でやるので、開催地の大学と協力するようです。

詳しくはこちら。

* * * * *

最後に最近のニュースに悲しみと憤りのおさまらないニュースが出ていたの、それに言及しておきたい。優秀な若手研究者がこんな目にあう国に未来があるのか?

ご冥福をお祈りします。

ついでに大学の世界ランキング。日本が威張る余地はもうどこにもないです。

THE世界大学ランキングTOP100【2019】
1 オックスフォード大学 UK
2 ケンブリッジ大学 UK
3 スタンフォード大学 USA
4 マサチューセッツ工科大学(MIT) USA
5 カリフォルニア工科大学 USA
6 ハーバード大学 USA
7 プリンストン大学 USA
8 イェール大学 USA
9 インペリアル・カレッジ・ロンドン UK
10 シカゴ大学 USA
11 スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETHZ) スイス
=12 ジョンズ・ホプキンス大学 USA
=12 ペンシルベニア大学 USA
14 ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL) UK
15 カリフォルニア大学バークレー校 USA
16 コロンビア大学 USA
17 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA) USA
18 デューク大学 USA
19 コーネル大学 USA
20 ミシガン大学 USA
21 トロント大学 カナダ
22 清華大学 中国
23 シンガポール国立大学(NUS) シンガポール
24 カーネギーメロン大学 USA
25 ノースウェスタン大学 USA
26 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE) UK
27 ニューヨーク大学(NYU) USA
28 ワシントン大学 USA
29 エディンバラ大学 UK
30 カリフォルニア大学サンディエゴ校 USA
31 北京大学 中国
=32 ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン ドイツ
=32 メルボルン大学 オーストラリア
34 ジョージア工科大学 USA
35 スイス連邦工科大学ローザンヌ校 スイス
36 香港大学 香港
37 ブリティッシュコロンビア大学 カナダ
38 キングス・カレッジ・ロンドン(KCL) UK
39 テキサス大学オースティン校 USA
40 カロリンスカ研究所 スウェーデン
41 PSL Research大学 フランス
42 東京大学 日本
43 ウィスコンシン大学マディソン校 USA
=44 マギル大学 カナダ
=44 ミュンヘン工科大学 ドイツ
46 香港科技大学 香港
47 ルプレヒト・カール大学ハイデルベルク ドイツ
48 ルーヴェン・カトリック大学 ベルギー
49 オーストラリア国立大学 オーストラリア
50 イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校 USA
51 南洋理工大学 シンガポール
52 カリフォルニア大学サンタバーバラ校 USA
53 ブラウン大学 USA
54 ワシントン大学(セントルイス) アメリカ
55 香港中文大学 香港
56 ノースカロライナ大学チャペルヒル校 USA
57 マンチェスター大学 UK
58 デルフト工科大学 オランダ
=59 カリフォルニア大学デービス校 USA
=59 シドニー大学 オーストラリア
=59 ヴァーヘニンゲン大学 オランダ
62 アムステルダム大学 オランダ
63 ソウル大学 韓国
64 パデュー大学 USA
65 京都大学 日本
66 南カリフォルニア大学 USA
67 フンボルト大学ベルリン ドイツ
68 ライデン大学 オランダ
69 クイーンズランド大学 オーストラリア
70 エラスムス・ロッテルダム大学 オランダ
=71 ミネソタ大学 USA
=71 オハイオ州立大学 USA
73 ソルボンヌ(パリ)大学 フランス
=74 ボストン大学 USA
=74 ユトレヒト大学 オランダ
76 アルベルト・ルートヴィヒ大学フライブルク ドイツ
77 マックマスター大学 カナダ
78 ブリストル大学 UK
=79 フローニンゲン大学 オランダ
=79 ウォーリック大学 UK
81 ペンシルベニア州立大学 USA
=82 メリーランド大学カレッジパーク校 USA
=82 成均館大学 韓国
=84 エモリー大学 USA
=84 モナシュ大学 オーストラリア
86 ライス大学 USA
=87 アーヘン工科大学 ドイツ
=87 ウプサラ大学 スウェーデン
89 エバーハルト・カール大学テュービンゲン ドイツ
=90 シャリテー大学病院 ドイツ
=90 モントリオール大学 カナダ
=90 チューリッヒ大学 スイス
=93 グラスゴー大学 UK
=93 ミシガン州立大学 USA
=93 中国科学技術大学 中国
=96 カリフォルニア大学アーバイン校 USA
=96 ニューサウスウェールズ大学 オーストラリア
98 ルンド大学 スウェーデン
=99 ダートマス大学 USA
=99 ヘルシンキ大学 フィンランド

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