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まえがき
「現在、欧米の国家では言論の自由が揺らいでいる」と我々はしばしば語る。しかし、このような一般的な表現自体が、今指摘されている当の言論の自由を悪化させるというジレンマが存在する。どういうことか?
現在我々が憂慮している言論の自由に対する攻撃とは、一般的な言論の自由なのだろうか?いや、そもそも言論の自由に対する一般的な攻撃という概念は成立するのだろうか?
言論の自由に対する抑圧の歴史は古い。古代ローマ帝国では、キリスト教が異端とされ、皇帝崇拝を拒否するキリスト教徒の言論が弾圧され、中世ヨーロッパでは、カトリック教会が異端とみなした思想や言論を抑圧するため、宗教裁判所が設置され、秦の始皇帝は、紀元前3世紀、秦の体制を維持する思想である法家以外の諸子百家の著作を燃やした。
フランス革命後の恐怖政治(1793年~1794年)の時代には、ジャコバン派は反革命的とされた言論や出版物を禁止し、マリー・アントワネットや穏健派ジロンド派の指導者など数万人をギロチンで処刑し、言論の自由は消滅した。
ナチス・ドイツは、反ナチス的な言論を徹底排除し、ナチス・イデオロギー以外の言論がほぼ消滅した。
ソビエト連邦のスターリンは、検閲機関(グラブリト)により出版物を厳格に統制し、反体制的言論の発信者を逮捕・処刑あるいは、グラーグ(強制労働収容所)へ送りこんだ。
アメリカの南北戦争時代(1861年~1865年)、リンカーンは人身保護令を一時停止し、反戦的な演説者を数千人、逮捕・投獄し、反戦的な新聞の発行を停止した(例:『シカゴ・タイムズ』の発行停止、1863年)。
第一次世界大戦中、米国のウィルソン政権は反戦運動や社会主義者を脅威とみなし、スパイ法(1917年)によって、軍事機密の漏洩や徴兵妨害を禁止し、反戦ビラ配布や演説を摘発し、セディション法(1918年)では、政府や軍への「不忠な」言論を犯罪化し、約2,000人を逮捕した。
1950年代の米国では、マッカーシズムが吹き荒れ、下院非米活動委員会による共産主義者の摘発という名目で赤狩りが行われた結果、人々の自己検閲が広がり、言論の自由が著しく萎縮した。
明治初期の日本は、新聞紙条例(1875年)で、新聞の発行を政府による許可制にし、讒謗律(1875年)で、政府や公務員への批判を「讒謗(ざんぼう)」として禁止した。政府批判や「不穏な内容」を掲載した新聞は発行停止や罰金を課せられ、編集者や記者が逮捕・投獄されるケースが頻発した。
人類史には、他にも言論の自由が危機に陥った例はいくらでも出てくる。それが古代であれ、言論の自由を人間社会における価値として確立していく近代においても、その本質は、支配者が自分たちにとって不利になる、あるいは敵対する情報を封じることにある。だから、それぞれの言論の自由に対する攻撃は、明確なターゲットが設定されている。
それは、古代ローマにとっては、キリスト教であり、中世ヨーロッパの教会権力にとっては、カトリック以外の全ての宗教であり、ジャコバン派にとっては、反革命思想であり、ヒトラーにとっては、反ナチ的思想であり、スターリンにとっては、反体制思想であり、リンカーンやウィルソンにとっては、反戦思想であり、マッカーシーにとっては、共産主義であり、明治日本にとっては、西欧自由主義であった。
裏返して言えば、それぞれのターゲットをこれらの支配者あるいは権力者は、彼らの支配体制にとっての脅威と感じていた。脅威がなければ、言論の自由を脅かす必要もない。にもかかわらず、目の前で起きている事象をターゲットが曖昧な一般的な言論の自由に対する攻撃と認識すれば、ターゲットを不可視化してしまう。
バイデン政権は、2021~2022年、COVID-19ワクチンや治療法に関する情報を抑制するため、ソーシャルメディア企業(Meta、Twitter、YouTube)にコンテンツの削除や制限を要請し、Metaは2021年に約2,000万件のCOVID-19関連投稿を削除した(Meta公式報告)。
2021年、バイデン政権はMetaに、選挙不正や1月6日の議事堂襲撃関連の投稿を「優先的に削除」するよう圧力をかけた。2023年、下院司法委員会で公開された内部文書で、Metaが政府の要請に応じたことが確認されている。
イスラエルによるガザ・ジェノサイド継続中の2023~2024年の間に、Metaは、1,049件のジェノサイドを批判する親パレスチナ投稿を削除した。これは、明らかにバイデン政権が2023年5月に公表した国家戦略における反ユダヤ主義対策、つまり親パレスチナ対策と同じ軌道にある。
2021~2022年、FBIは、TwitterやMetaに、ハンター・バイデンのビジネス疑惑に関する投稿を「ロシアの偽情報」とみなして監視・制限するよう要請した。
これらはすべてバイデン・ハリス政権による言論の自由に対する干渉だが、いったい彼らは何をターゲットにしていたのか。COVID-19ワクチンや治療法に関する情報、息子のハンター・バイデンの擁護、そしてシオニスト擁護にまとめられる。全て政権維持への脅威を排除するために必要だったのだろう。前者二つは国内事情としても、最後のシオニスト擁護は、本来、米国事情ではない。しかし、シオニストを守らなければ政権が維持できないところまで、長い歴史を通じて米国にシオニストが食い込んで来たことを示している。
トランプ政権になってもこれが変わらなかった。今騒がれている言論の自由に対する脅威として語られる事件は、すべてシオニストを守るための事件だ。親パレスチナ的意見を徹底排除するために行われている。現在進行中の言論の自由に対する攻撃のターゲットは、シオニストの行為に疑問を示したり、非難したりするものであるのは明らかだ。これを言論の自由に対する一般的脅威とするのは、その本質を隠す機能しかない。攻撃するべきは、バイデン政権でもトランプ政権でも一貫して脅威的な影響力を及ぼしているシオニストなのだ。
この記事で、ケイトリンさんは、シオニズムが言論の自由に対する脅威の根源にあることを具体的な例を出して説明している。一般論としてフォーカスがボケていない点は、日本語メディアも見習うべきであろう。
シオニズムは、今日の西洋世界における言論の自由に対する最大の脅威である。
[原文情報]
タイトル:Zionism Is The Single Greatest Threat To Free Speech In The Western World Today
著者:Caitlin Johnstone
配信日:APR 25, 2025
著作権:こちらをご覧ください。
原文の朗読:こちらで 聴けます。
音楽グループKneecapへの捜査とその背景
アイルランド語のヒップホップ・トリオ「Kneecap(ニーキャップ)」が、アメリカの音楽フェスティバルで「FUCK ISRAEL, FREE PALESTINE(イスラエルをぶっ潰せ、パレスチナに自由を)」という言葉の前で(上のカバー写真)、パフォーマンスを行ったことを受け、現在、イギリスの対テロ警察によって捜査を受けている。
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