【Overseas-50】 −高市政権は本当に無能なのか1/2(内政)

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史上最大とも言われる世界規模のエネルギー危機に際して、高市政権の無能説が脚光を浴びている。
今回は、その無能説に根拠はあるのかどうかを、2回に分けて探求してみる。
一回目は内政に関して、程度の差はあるが中東依存度の高いアジアの国々との比較を中心に整理する。二回目は外交面でのふるまいに関して、アジア諸国に限らず世界各国との比較をして日本を位置づけてみる。

各国の危機対応策を見ていると、それぞれのお国の事情が出てきて興味深い。日本もその一つとして外から見てみると、評価が変わるだろうと思う。今回は、エネルギー危機に際しての「内政」に関して、次回は「外交」に関して整理することにした。

目次

  1. IEAエネルギー危機対応策トラッカー
  2. 近隣諸国のエネルギー危機対応策
    • マレーシア:
    • フィリピン:
    • タイ:
    • ベトナム:
    • ラオス・カンボジア:
    • インドネシア:
    • ミャンマー:
    • インド:
    • パキスタン:
    • バングラデシュ
    • スリランカ:
    • ネパール:
    • エジプト:
    • オーストラリア:
    • 韓国:
    • 日本:
    • 中国:
  3. 中国と日本
  4. 日本の特異性

IEAエネルギー危機対応策トラッカー

IEA(国際エネルギー機関)が、各国のエネルギー危機対応策を追跡する『2026 Energy Crisis Policy Response Tracker(2026年エネルギー危機対応策トラッカー)』というページを3月31日に公表した。

各国政府の対応策を、以下のように二つに大きく分類している。
 (a)需要削減(節約・省エネ)(Conservation / Demand Reduction)
 (b)消費者支援(補助・価格抑制対策)(Consumer Support)

さらに、(a)需要削減(節約・省エネ)は、以下のように6分類されている。
 ①在宅勤務:リモートワークの推奨または義務化
 ②冷房:エアコンの使用温度制限
 ③公務出張:公務員による航空機および自動車での移動の制限    
 ④学校・大学:休校または開校時間の短縮    
 ⑤キャンペーン:消費者に対し、エネルギー需要の抑制を要請または義務付ける    
 ⑥交通:自動車の使用制限、燃料の配給制、速度制限の引き下げ、公共交通機関の利用促進

もう一方の(b)消費者支援(補助・価格抑制対策)の方は、以下のように4分類されている。
 ①価格上限制:燃料価格の上限を設定する
 ②燃料補助金:直接支援を拡大する    
 ③課税:エネルギー税を引き下げる    
 ④その他

言葉を換えれば、(a)の需要削減は、みんなでエネルギーの節約をしましょうという政策であり(需要削減型)、(b)の消費者支援は、消費者のエネルギーの必要を何とか満たしますよという政策だ(需要維持型)。

一方でもうエネルギーを使うなと言いたいが、エネルギーが使えなくなると経済が回らなくなる。そういうジレンマの中で各国政府は対応策を練らざるを得ない。


この下に、近隣諸国の対応策を日本語でざっくりまとめたが、詳細は、IEAの公式トラッカーが更新され続けるので、そちらを参照してほしい。

各政策項目の最後に、(a)とか (b) を付け加えたが、(a)は需要削減型、(b)は需要維持型を表す。

近隣諸国のエネルギー危機対応策

マレーシア:

・リモートワーク、4月15日から政府機関・政府系企業で全面導入(a)
・公務員の不要旅行を制限(a)
・Anwar Ibrahim首相、燃料消費削減とエネルギー供給安定を国民向け特別演説で発表(a)(b)
・燃料補助金継続・拡大(固定価格維持のため)(b)

フィリピン:

・4日勤務週(公務員)(a)
・国家エネルギー非常事態宣言(a)
・公共機関燃料消費削減要請(a)
・学生・労働者向け無料バス運行(a)
・空調24℃制限(a)

タイ:

・リモートワーク・ビデオ会議推奨(a)
・空調26℃(a)
・公務員海外旅行自粛(a)
・カープール推進(a)
・エレベーター使用削減(a)

ベトナム:

・リモートワーク推進(企業・公務員向け)(a)
・公務員旅行制限(a)
・地方政府にエネルギー節約要請(a)
・私用車抑制・公共交通/カープール奨励(a)
・燃料価格安定基金活用+輸入関税一時カット(b)

ラオス・カンボジア:

・リモートワーク・ローテーション勤務(a)
・海外出張禁止(a)
・空調制限・公共交通奨励(a)

インドネシア:

・リモートワーク(a)
・金曜日の公務員WFHを導入(4月1日から、健康・治安部門を除く)(a)
・公務員の不要旅行制限(a)
・政府庁舎でのエネルギー節約戦略強化(照明・空調最適化)(a)
・バイオディーゼルプログラム加速(燃料代替)(b)
・燃料消費20%削減(b)
・補助金付き燃料の購入を1車両あたり1日50リットルに上限設定(b)

ミャンマー:

・水曜公務員リモート(a)
・奇数・偶数ナンバー交互運転規制(a)
・燃料配給(a)

インド:

・産業用天然ガス使用80%制限(a)
・LPG→パイプラインガス移行加速(a)
・商業用LPG配給制限(Essential Commodities Act発動)(a)
・都市部LPG予約25日間隔(a)
・職場で「Bring Your Own Food」推奨(a)
・LPG国内優先供給、ガソリン・ディーゼル消費税引き下げ(b)

パキスタン:

・4日勤務週導入(a)
・公務員燃料手当50%削減(a)
・学校2週間閉鎖(a)
・高速道路速度制限(a)

バングラデシュ

・空調25℃制限(a)
・大学閉鎖(a)
・不要照明回避(a)
・車両燃料供給制(a)
・公共交通推進(a)
・燃料配給制度導入(パニック買い防止)(a)

スリランカ:  

・水曜公務員・学校・大学休日(リモート推奨)(a)
・全国QRコード燃料配給(私用車・バイクにクォータ制)(a)
・オフィス26℃制限(a)
・不要照明オフ(a)

ネパール:

・リモートワーク推進(a)
・空調・照明制限(a)
・不要旅行自粛(a)

エジプト:

・公務員1日リモート(a)
・行政首都午後6時閉鎖・照明オフ(a)
・店舗平日9pm・週末10pm閉鎖(a)
・公共照明削減(a)

オーストラリア:

・国民燃料使用自粛キャンペーン(a)

韓国:

・公的機関**5日車両使用制限(a)
・主要石油消費企業にエネルギー削減要請(a)
・国内燃料価格上限設定、備蓄放出(2246万バレル)(b)

日本:

・民間備蓄15日分放出(保有義務を70日→55日に緩和)(b)
・国家備蓄も一部放出(b)
・ガソリン価格抑制のための補助金(b)

中国:

・国内精製油価格コントロール(輸出全面禁止(a)で国内優先)(b)


上記各国の政策を一つずつ見られた人は気が付かれたと思うが、日本は、(a)需要削減型の政策を一切とらない点でかなり特異なケースだ。

備蓄量がたっぷり(?)あるからという理由なのだとしても、危機がこのまま続けば、いつかは備蓄もなくなるかもしれない。(a)需要削減型の政策が全くないのは、備蓄を少しでも長持ちさせようという考えがないことを示す。

その一方で、(b) 需要維持には力を入れている。例えば、ガソリンの価格が急騰し、消費者が困らないようにするということだ。これは、超短期的には、一般庶民には助かる政策であり、その点で人気のある政策であるだろう。しかし、その反面は、市場価格が上がるというシグナルがないため、一般ユーザーが危機感を持てず、無駄遣いを抑えようというインセンティブが抑えられてしまう。つまり、いつまで続くか分からないエネルギー危機という状況で、日本のエネルギー不足耐性をあえて悪化させていることになる。

これは、(a) 需要削減型の政策を一切取らないことと同様、エネルギー危機にまったく対応できていないと言わざるを得ない。

失業して次の仕事が見つかるまで貯金で食いつながざるを得なくなったら、その貯金を少しでも長持ちさせようとして出費を減らす(つまり需要を削減する)のは、日本政府には思いもつかない一般庶民だけの考えだったのか。

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