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今回は、目前に迫っている、あるいは回避されるかまだ分からないアメリカのイラン攻撃について書くけれど(ひょっとしたらこれを配信した頃には始まっているかもしれない)、いつものあの嫌な空気が耐え難い。大変な悲劇が起きるかもしれないという想像に滅入るからではない。いや、もちろんそれは根底にある。しかし、「いつものあの嫌な空気」というのは、それとは別のことだ。
今、英語圏メディアでは、アメリカがイランに戦争を仕掛けるかどうかを毎日毎日大騒ぎしている。そりゃ、当事国なんだから当然だろう。YouTubeはその議論でいっぱいになっている。日本ではどうなのか。新聞・テレビがどう扱ってるのか分からないが、日本語YouTubeにはいろんな専門家やらインフルエンサーが“イラン戦争“について“解説“している。(それにしても、イラク戦争とかアフガン戦争とかイラン戦争とか、戦争を仕掛けられる国の名前をとって、その戦争名にするのもおかしな話だ。全部、戦争を仕掛けたのはアメリカなのに、微妙にアメリカという国名が蒸発している。)
アメリカにしろ、日本にしろ、これらの一連の報道番組に、どうしても彼らの「高揚感」を感じる。もっと身近な表現で言えば、「はしゃぎ」のようなものが近い。それは立場に関係なく現れる。戦争を避けるべきと説く立場の人も、戦争の必要性を熱く説く立場の人も、同様に興奮し、高揚し、はしゃいでる。「いつものあの嫌な空気」というのは、そういうことを言っている。
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この記事は、2026年2月17日に公開されたナポリターノ判事のチャンネルJudging Freedom のレギュラーゲストであるシカゴ大学のミアシャイマー教授のインタビューを元にしている。この回で、ミアシャイマー教授は、前半はウクライナ戦争について、後半はイラン戦争の可能性について語っているが、この記事は後半部分だけを参考にする。
ナポリターノ判事とミアシャイマー教授の話は、いつも構成がよく出来ているので、今回の記事は、二人の会話の内容を話の流れに従って五つの節に分割し、各節の最初に概要を書いて、それに必要と思われる注を追加した。
ミアシャイマーは、自分のことを究極のリアリストであると呼んでおり、この会話でも、何に対しても情緒的な肩入れは一切なく、一貫して現実世界の構造を説明しようとしている。ミアシャイマーの議論で明らかなのは、アメリカの外交・軍事的選択が非常に強くイスラエルに拘束されているという事実だ。アメリカという巨大な象に宿る寄生虫のようにイスラエルはアメリカの主体的行動に影響を及ぼしている。まるでイスラエルがアメリカの主人であり、アメリカはイスラエルの言うことに逆らえないかのように見える。
日本の読者の中には、このイスラエル・アメリカの非対称な関係から、日米関係の非対称性を想起する人も多いだろう。アメリカの言うことに決して逆らえない日本という現実に納得できない国民は少なくないと思う。そういう視点で見ると、まるで「イスラエル→アメリカ→日本」という捕食関係(predator–prey)があるかのように見えてくる。ここから逃れない限り、日本の安全保障は、独立主権国家のものではなく、この捕食関係の中での最下層の餌食(prey)の役割を果たし続けることになるだろうと危惧する。
目次
- イラン問題とパレスチナ問題
- 外交的解決の可能性
- 軍事的解決の可能性
- 誰が戦争を望んでいるか
- 戦争は本当に起きるのか
イラン問題とパレスチナ問題
概要:ミアシャイマーは、仮に二国家解決が実現し、パレスチナ国家とイスラエル国家が平和的に共存できるなら、中東全体ははるかに平和になるだろうと言う。ここでミアシャイマー教授は、慎重にも「パレスチナ国家とイスラエル国家が隣り合って共存できると仮定すれば」という条件をつけていることに注意する必要がある。
さらに、彼はイラン問題はそれとは別の軸で存在すると指摘する。たとえパレスチナ問題が解決しても、イスラエルは、イランの核濃縮能力と弾道ミサイルの保持を絶対に許容しないという姿勢を崩さないからだ。そしてイスラエルが照準をイランに向け続ける限り、米国もまたイランを照準に置くことになる。
したがって、イラン問題は、パレスチナ問題とは別の問題であり、イスラエルがイランを脅威と認識し続けることによって、イラン問題はパレスチナ問題とは独立したものとして存続する。
同時に、ロシアと中国はイランとの関係強化が進んでおり、イラン問題が解決しないと将来的には中東において三つの大国が関与する深刻な問題が生じることになる。
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