【Overseas-32】リチャード・ウォルフ:トランプがやりやがった・・・

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この【Overseas】シリーズでは、情報鎖国中の日本に、海の外で話されていることを津波のように大量に垂れ流して、閉じられた日本語文化圏の文脈を破壊することを目指しています。

いつも同じ人(しかもほんの限られた人数の)、しかも専門家でもなんでもない人があらゆることについて”コメント”して、それがあたかも”賢い人”が言う”正しい常識”であるかのようにお茶の間に蔓延させる日本語文化圏の悪弊を破壊しない限り、日本が落ち込んだ陥穽は認識もされず、従って打開のための議論も始まらない。

このOverseas シリーズでは、様々な人を取り上げますが、個々の意見に賛同するかどうかにはあまり重点を置いていません。それよりも彼らが議論している文脈まるごとを日本に持ち込むことの方を重視しています。

リチャード・デイビッド・ウォルフ(Richard David Wolff )は、経済学の方法論と階級分析に関する研究で知られるアメリカの経済学者です。その志向から、彼にはマルクス主義学派あるいは左派という接頭辞がしばしばつけられます。

ユダヤ系ドイツ人市民であるウォルフの両親は、ナチズムから逃れるため、第二次世界大戦中にアメリカ合衆国へ移住しました。彼の父親はドイツのケルンで弁護士を務めていましたが、アメリカでは、オハイオ州ヤングスタウンで鉄鋼労働者となりました。ウォルフが生まれたのは、1942年なので、この生活の激変を直接に感じることが出来たのかどうか分かりませんが、彼は興味深い言ことを言っています。

「あなたが世界が機能する仕組みについて抱く期待は、人生の中で変わってしまうだろう。予期せぬことが起こり、しばしば悲劇的なことが起こる。柔軟であり、世界中で起こる多様な事象に気づくことは、単に思考する人間として良いアイデアであるだけでなく、生存にとって不可欠なことだ。私にとって、私が暮らしていた政治的・経済的環境を理解することは、緊急の課題であり、学校時代の同級生たちとは異なり、不安定で危険な世界を navigation するための理解の緊急性を認識していたことが、私を少し異なる存在にしました。それは私にとって非常に重要な教訓でした。」

Watch Extended Interview with Economist Richard Wolff on How Marxism Influences His Work

ウォルフは1963年にハーバード大学で歴史学の学士号を優等で取得しました。1964年にスタンフォード大学で経済学の修士号を取得し、1966年にイエール大学に転入し、経済学で二つ目の修士号、1967年に歴史学の修士号、1969年に経済学の博士号を取得しました。

その後、イエール大学、ニューヨーク市立大学、ユタ大学、ソルボンヌ大学、ニューヨーク市のブレヒト・フォーラムで経済学を教え、現在は、マサチューセッツ大学アマースト校の経済学名誉教授であり、ニューヨークのニュー・スクール国際関係大学院プログラムの客員教授を務めています。

この記事は、下の動画のリチャード・ウォルフの話を全訳したものです。

配信日は、2025年6月30日となっていて、話の内容も最近のことを含んでいるので、6月30日よりもそう遠くない日に撮られたものと思われます。

この動画の概要欄には以下のように書かれています。

リチャード・ウォルフは、アメリカの長期的な衰退について、広範で容赦ない分析(a sweeping, unsparing analysis of America’s long decline)を展開しています。彼は、労働者階級と中間層の崩壊を、意図的な政策選択——オフショアリング、労働組合の破壊、企業の統合——に起因させ、これらの政策がアメリカの産業基盤を破壊したと指摘しています。責任は本来あるべき場所——資本——に帰せられることはありませんでした。代わりに、職を失った一世代の労働者は恥をかかされ、見捨てられ、その後、反動的なスケープゴートを支持するように政治的に操られました。経済的絶望が深まるにつれ、権威主義的ポピュリズムの魅力を増しました。

ウォルフにとって、この衰退に対峙しなかった両党の失敗——無謀な外交政策の冒険主義と相まって——は、米国をグローバルな信頼危機に追い込みました。終わりのない戦争、好戦的な貿易政策、道徳的偽善は、中国や他のBRICS諸国が戦略的な落ち着きと経済的統合で台頭する中、米国をますます孤立させました。

それでも、ウォルフは前進の道を見出しています——もし大胆なポピュリスト左派が新自由主義の正統性から脱却し、企業権力に真の挑戦を挑むなら。彼の解決策は改革だけでなく、再構築を要求します:軍事予算の削減、帝国の放棄、職場民主主義を軸にした経済の再構築。アメリカは、多極化の世界で生きることを学ばなければ——そうでなければ、その世界によって破壊されるリスクを負うことになります。

という具合に整理整頓されているのですが、実際のウォルフの話は、かなり突っ走っていて(それをa sweeping, unsparing analysis of America’s long declineと表現しようと思えば出来ないことはないですが)、これは言い間違いじゃないだろうかとか、なんか言葉飛ばしちゃったのかとか、あれ?文が終わってないとか思うところが結構あります。なるべく元の勢いをそのままにして、意味の繋がるような日本語にしたつもりですが、たぶんよく分からないところも出てくると思うので、上の公式要約を念頭において読んだ方がよいと思います。

彼は左派と位置付けられてますが、彼の話をよく聞いていると、左派・右派に関係なく、アメリカの歴代政権に対して批判的であることがよく分かります。トランプが勢いをつけてしまった理由も説明していますが、これに関しては、既に定番となっている話が繰り返されています。つまり、トランプ再興という現象の裏にあるのは、そもそも歴代の左派政権の失政、もしくは救われるべき層の放置と移民に依存した怠惰な政権維持によるバックファイアであると。

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