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今回の記事は、アンドリュー・ナポリターノ判事のYouTubeチャンネルでのスコット・リッター氏のインタビューの内容をほぼ全訳したものです。リッター氏は元海兵隊の情報将校として12年間勤務した後、1991年から98年まで、イラクにおける大量破壊兵器捜索のための国連の主任査察官を務めた人です。
Scott Ritter: Does Trump Understand Russia?(トランプはロシアを理解しているか?)というタイトルの約30分の動画ですが、ロシアだけでなく、イスラエルの問題についてもかなり長く話されてます。
トランプの行動についての分析は毎日腐るほど出てきますが、トランプには教養がないだけでなく、一貫した思想がないことを忘れたか無視している議論も多く、それでは賞賛するにしろ批判するにしろ、まるで幻覚に向かって話しているようなものです。そもそもトランプにありもしないものを褒めても貶しても無意味です。
その一方で、多くの論者がトランプの行動原理に強く影響しているファクターとして、ナルシシズムと直観を指摘していますが、彼の一見矛盾し突拍子もないように見える行動の多くは、無教養・無思想にナルシシズムと直観を加えるとよく説明できます。
このインタビューで、リッター氏は、トランプが「弱い男」であるという話を始めますが、これはトランプの中に確固とした(邪悪な)思想があるかのような説明よりも説得力があります。トランプは自分をいつも強く見せますが、ナイスガイ症候群のように、他人に好かれたいという気持ちに支配され、結局は衝突を避ける。それが彼の外交に出てしまっているとリッター氏は言います。彼の言う「弱い男」というのも、ナルシシズムの派生物のようにも見えます。
リッター氏の話のトピックは目次にあるように多岐に渡ります。アメリカの無知が一つのテーマとして流れています。それと並行してリッター氏の話ぶりに現れているのが、アメリカ人としての怒りです。ウクライナで何十万人も死に、パレスチナ人の子どもは毎日殺されている、それもアメリカの武器によって。そして、それに対して何も出来ないことに対する怒り。彼は、吐き捨てるように言います。
Every American should look in the mirror and say “You suck.” I look in the mirror every morning I say “I suck.“
(すべてのアメリカ人は鏡を見て 「お前は最低だ 」と言うべきだ。私は毎朝鏡を見て 「俺は最低だ 」と言う。)
途中で、ナポリターノ判事が、「ガザの子どもを一人たりとも残してはならない」と話すイスラエルの政治家の動画を流しますが、それを見た後のリッター氏は沈鬱な表情に沈みますが、そこから怒りを抑えた正義の話に展開していきます。
最後にロシア人とアメリカ人の能力の違いについて話すところは、日本人にとっても示唆に富むものです。彼は、マルコ・ルビオ国務長官の無知について以下のように言います。
彼は、自身の反ロシア的イデオロギーに満ちた空想の世界を構築しており、それが現実を遮断し、彼が物事を理解する際に、その空想のプリズム越しにしか見えなくなっているのです。
それに対して、ロシアが常にアメリカに対して優位に立っている理由をリッター氏は説明します。
SNSでは、リッター氏の切り取り動画が多く出回っていますが、英語が分かっても分からなくても、やはり動画そのものを一通り見ることをお勧めします。
目次
弱い男ードナルド・トランプ
私たちは最低だ。
イスラエルの思想
正義の問題
トランプとネタニヤフの関係
アメリカの無知
ロシアの有能さ
ナポリターノ判事:
みなさん、こんにちは。Judging Freedom のアンドリュー・ナポリターノ判事(Judge Andrew Napolitano)です。今日は2025年5月21日、水曜日です。このあとすぐ、スコット・リッター氏をお迎えして、「ドナルド・トランプはロシア人を理解しているのか?」についてお話しします。
*
弱い男ードナルド・トランプ
ナポリターノ判事:
スコット・リッター(Scott Ritter)さん、ようこそお越しくださいました。親愛なる友人よ。プーチンとトランプの電話会談や、ウクライナにおける「特別軍事作戦」の解決に向けた試行錯誤についてあなたの考えを伺う前に、まずはイスラエルについてお聞きします。
事実上の国務長官であるスティーブ・ウィトコフ(Steve Witkoff)氏が、週末にABCニュースでガザについて質問された際に「ドナルド・トランプは人道主義者だ」と答えました。笑ってしまいますよね?
スコット・リッター:
ええ、つまり・・・ドナルド・トランプは人間として、根本的に「弱い」男です。最も抵抗の少ない道を選ぶタイプの人間です。
つまり、かつて「私はイスラエルを支持する」と言うことが「強さ」の証とされていたとき、彼もそう言いました。しかし今では、もはや無視できないレベルの写真――我々がイスラエルに提供した爆弾によって死亡した子どもたちの姿――を前にして、しかも我々が交渉していた停戦を破ることを許可した上でのことなのに、突然彼は「人道主義者」を名乗り出したのです。
これはドナルド・トランプの根本的な性格的欠陥の一つです。彼は本質的に「弱い」人間であり、何の信念も持っていません。気まぐれで、一貫性がありません。
そして彼は非常に影響されやすい。彼に面と向かって意見するだけで、簡単に揺らいでしまうのです。これが皮肉な点でもあります。もし彼の周囲に「大統領、あなたがやっているのはジェノサイドの後押しです。歴史にそのような大統領として名を残すことになりますよ」と言える人物がいれば、正しい政策を実行したかもしれません。
しかし、彼の周囲には、ジェノサイドを推進する良心のない人々が取り巻いています。結局、状況が彼にとって手に負えなくなったのです。そして改めて言いますが、もし彼が「強い男」であれば(それが良いことだとは限りませんが)、写真を見てもこう言えたでしょう――「いや、私は方針を変えない。私は決断した。我々はこの問題を軍事力で解決する。いくら死んだ赤ん坊の写真を見せられても、私は考えを変えない」と。
ドナルド・トランプは強い男ではありません。彼には信念がないのです。彼が子供たちを殺さない決断をしたのは、突然良心に目覚めたからではありません。ただの弱い男であり、周囲の人間が「これはまずい、あなたにダメージを与える」と言ったから、突然、自分のイメージを気にし始めただけです。だから、今になって「人道主義者」になったわけです。
彼の周囲には、主にネオコンがいて、「アメリカ・ファースト」派も相当数います。誰がどの陣営に属するかを言うことに意味はありませんが、我々は彼の耳元でささやかれているそれぞれ異なる意見の存在を知っています。そして、共通して言えるのは、彼ら全員が熱烈なシオニストだということです。
誰かが彼にこう言っているとは思えません――「これはひどい、これは恐ろしい。ネタニヤフは怪物だ。彼はあなたを利用している。これはジェノサイドだ。歴史はあなたをそのように裁くだろう」と。ウィトコフは、あのセリフをただ放っただけでしょう――非論理的で馬鹿げたものとして。
2018年を思い出してください。ドナルド・トランプはシリアを爆撃しようと決断しました。理由は、彼の娘がシリアのホワイト・ヘルメットが主流メディアに流した映像や写真を見たからです。そこには、シリア政府による化学兵器攻撃の被害者とされる人々の姿がありました。
皆さんに思い出していただきたいのは、2014年以降、シリアには化学兵器は存在しなかったということです。しかも今、私たちは制裁を解除しようとしているようですが――あの時、ドナルド・トランプが「存在している」と主張してシリアを攻撃した化学兵器は一体どこへ行ったのでしょう?
我々は「それらが存在する」とされたと聞かされました。攻撃用兵器であり、「それが発射された場所」とされた地点を爆撃しました。しかし、要点は彼がこれを行った理由が、「その映像が酷すぎたからだ」ということです。彼の内閣からその画像について説明を受けたわけでもありません。ただ間接的な情報経路で入ってきたものでした。
今回も、同じようなことが起きた可能性があります。彼の取り巻きであるシオニスト集団に属していない誰かが彼にこう言ったのかもしれません――「ねぇ、パパ、あるいはおじいちゃん、これはひどいことだよ。子供たちが殺されているんだ」と。
聞いたところによると、彼は実際に自分の孫や子どもをとても大切にしているそうです。彼が人道主義者であるとは言えないかもしれませんが、「良い父親」であり「素晴らしい祖父」であるという評判はあるようです。だから、もし愛する誰かが彼にその事実を伝えたならば、行動に移すかもしれません。
ただし、それは彼が「人道主義者」だという意味ではありません。単に、自分を悪く見せるような情報源からの影響を受けて、それを修正しようとしているだけなのです。
ナポリターノ判事:
トム・フレッチャー氏(国連人道問題および救援担当事務次長)は、2日前の国連安全保障理事会でこう述べました――ガザ地区にいる14,000人の赤ちゃんは、もし今日、5月21日水曜日の終わりまでに食料と栄養を得られなければ、あと48時間の命だと。
その子供たちが食料を得られたかどうか、私には分かりません。ネタニヤフ側が搬入を許可したのかも分かりません。アメリカが何かしたのかどうかも不明です。あなたは、人間として最低限の栄養がガザに届けられているのか、何かご存知ですか?
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