【Overseas-22】ロシア軍に従軍したアメリカ人記者は何を見たか。

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[文字数:16,134字]

Overseas というシリーズは、日本では海外からの情報の遮断や歪曲が徹底していて、とても歪んだ奇怪で幼稚な世界像が作られてしまっていることを危惧して始めたので、特定の立場の意見や思想を主張するのではなく、世界の文脈をごそっとそのまま持って来て、読者の精神世界の拡大に寄与することを目標にしています。

世界の文脈をまるごとごそっと持ってくるのは、実際には不可能なので、トピックごとに全体の構造をまとめる構成にして記事を書く傾向がありましたが、それではなかなか追いつかないのが実態でした。

そこで、今までのように、トピックごとに構成するタイプの記事に加えて、海外の記事や動画の内容を出来るだけそのまま筒抜けになるようにどんどん流していく洪水タイプの記事も書いていくことにしました。

というわけで、今回は洪水タイプの一つ目になります。


今回は、ロシア軍に従軍記者として戦場についていったアメリカ人の記者のインタビューを取り上げます。インタビューアーはタッカー・カールソンです。カールソン氏は日本では、プーチンのインタビュー日本語版はこちら)で有名になったかもしれませんが、元々Fox News の超有名アンカーの一人でした。Fox Newsと喧嘩して退職し、今は400万人以上のフォロワーがいるYouTubeチャンネルを運営するジャーナリストです。

今回の記事は、そのカールソン氏がパトリック・ランカスターという記者にインタビューした動画の内容を要約したものです。

ランカスター氏は、カールソン氏とは違って、話をする専門家ではないので、しばしば話をしている時にもたもたつきます。正直、聞いていてもイラつくこともあるくらいです。それを逐語訳すると意味が分からなくなるので、なるべく整理して日本語にしてます。重複した話や主題とあまり関係ない話も省略しました。但し、ランカスター氏の心に強い衝撃を与えた戦争犯罪のトピックについては、省略せず重複を承知で全部残しました。

ロシア軍に従軍したのだから、ロシア視点に偏っているから、こういう話は意味がないという意見はもちろんあるでしょう。それは、ウクライナ側で取材する記事がウクライナ視点に偏ってるのと同様です。どちら側から発信されていても、その点を考慮して受け取るべきだと思います。問題は、情報空間におけるウクライナ視点への圧倒的な偏りです。

このインタビューを取り上げた意味は、日本語メディアで得られるウクライナ戦争の情報が圧倒的にウクライナ発に偏っている欧米メディアに依存しているからです。この点は、主流メディアであるテレビ・新聞より、SNSの方が海外発の情報を翻訳して発信している個人アカウントがかなりあるので、かなりましですが、それでもこの情報元の歪みは凄まじいものがあります。

これは、日本の主流のメディアだけの問題ではありません。そもそも発信元である欧米英語メディアの偏向が深刻なので、それをそのまま流せば、当然欧米メディアの偏向もそのまま反映されてしまいます。この欧米メディアの偏向については、下の二つの記事に詳しく書きましたので参考にして下さい。

カールソン氏も言ってますが、ロシア軍に組み込まれて取材している西側ジャーナリストは1人だけです。探せば、他にもいるのかもしれませんが、ウクライナ側に入って発信する記者が数千人規模であることに比べれば、ロシア側から発信する記者が圧倒的に少ないことに変わりはないでしょう。

この動画の元のタイトルは、Patrick Lancaster From the Frontlines: What They’re Not Telling You About the Russia/Ukraine Warというものです。直訳すると、「パトリック・ランカスター 最前線から: ロシアとウクライナの戦争について語られていないこと」のような意味です。下のYouTubeビデオで全部見ることが出来ます。英語が分かる人も分からない人も、少しは見た方がよいと思います。

というのは、情報には言葉だけでは伝わらない視覚や聴覚によって伝わるものがあります。この動画からは、パトリック・ランカスターさんの人となりのようなものが伝わってきます。それが決してメジャーなメディアに取り上げられない理由でもあるような気がします。パトリック氏のYoutubeチャンネルも80万人以上のフォロワーがいるので本来は相当に大きな収入になるはずですが、彼のチャンネルは収益化させてもらえないそうです。

この動画は、全部で1時間ちょっとの長さです。トピックがあちこちに飛ぶので、分割して小見出しをつけ、要点が分かるようにまとめました。この話とウクライナから発信される情報と合わせて、何が真実に近いかを判断するのは、あなたということになります。では、どうぞ。

目次

【Part 1】 イントロ
【Part 2】 この戦争はもっと早く始まっていた
【Part 3】 ドンバスの戦争と「内戦」――8年の記録
【Part 4】 妻の家族に襲いかかった戦争
【Part 5】 「ウクライナはもう存在しない」という感覚
【Part 6】 戦場の現実
【Part 7】 クルスク前線での自爆ドローン
【Part 8】 誰が勝っているのか?
【Part 9】 いったい何人死んだのか?
【Part 10】 学校の地下で見つけた女性の遺体――拷問、強姦、そして処刑
【Part 11】 地下室での住民虐殺
【Part 12】 クルスクでの民間人襲撃
【Part 13】 ロシア軍の反攻と「住宅証明書」
【Part 14】 戦況の変化と「未来の戦争」――ドローン戦と8つの戦闘地域
【Part 15】 宗教・文化・道徳の戦争
【Part 16】 北朝鮮兵の噂と、ロシア側にいる唯一のアメリカ人記者
【Part 17】 独立報道への転機
【Part 18】 「敵リスト」に載せられた家族
【Part 19】 外国人傭兵の運命
【Part 20】 戦争はいつ終わるのか?――ロシア法と「終われない理由」 

【Part 1】 イントロ

Tucker Carlson(タッカー・カールソン)
過去3年間で、数百人、おそらくは数千人の西側ジャーナリストたちがウクライナからウクライナ戦争を取材してきました。彼らは実質的にウクライナ政府やその軍、そして多くのプロパガンダ機関に組み込まれており、ウクライナ政府の高官たちから「話すべきこと」を受け取り、ゼレンスキー大統領に最も追従的な態度でインタビューを行い、ウクライナ政府とNATO、そして何よりもバイデン政権の広報的役割を果たしてきました。

一方で、この戦争の「もう一方の側」、すなわちアメリカが事実上費用を全額負担しているこの戦争のロシア側においては、ロシア軍に組み込まれて取材している西側ジャーナリストは1人だけです。

彼の名はパトリック・ランカスター。ミズーリ州セントルイス出身の米海軍の退役軍人です。過去11年間この地域から報道しており、過去3年は前線からの取材を続けています。ですが、彼は主要な西側メディアによって一度も取材されたことがありません

このことは、一つの重大な疑問を浮かび上がらせます。

他方の視点を知らずして、我々が加担させられている戦争を、本当に理解できるのか?」ということです。

それでは、パトリック・ランカスター(Patrick Lancasterを紹介しましょう。

パトリックさん、今日は出演してくれて本当にありがとう。君は、おそらく唯一、あるいは唯一に近い、ロシア軍に組み込まれているアメリカ人ジャーナリストだと思うけれど、この戦争に関わってどれくらいになる?

【Part 2】 この戦争はもっと早く始まっていた

Patrick Lancaster(パトリック・ランカスター)
こんにちは、タッカーさん。こちらに出演できて本当に光栄です。

主流メディアが世界の人々に見せたがらない事実を少しでも伝えることができるのは、ありがたいことです。この招待に感謝します。

私はこの戦争、この紛争を、多くの人々が理解しているよりもずっと前から取材しています。

あなたもご存じのように、この戦争は3年前から始まったわけではありません。2014年に始まった、もしくは人によってはもっと前だと言うかもしれませんが、実際のところ、2014年を出発点として捉えるのが適切でしょう。

2014年のクリミアでの出来事――すなわちクリミアがロシアに「再統合された」ことが、この戦争の発端です。このとき住民投票が行われ、クリミアの人々はウクライナからの離脱とロシアへの再編入を選びました。

私はまさにその住民投票のときに、クリミアに取材に行きました。人々が通りで「ようやく家に帰れる」と泣きながら語っていた姿を目の当たりにしました。1956年以前、クリミアはロシアの一部でした。だから1956年以前に生まれた人たちは、ロシア生まれなのです。そういった人たちが「故郷に戻れる」ことに本当に喜んでいた。それが現地で見た事実です。

それ以来、私はほぼ毎年、クリミアを含むこの地域を訪れ、取材してきました。そしてこの出来事が、私がウクライナとロシアの関係を本格的に追い始めるきっかけとなったのです。

ヨーロッパからクリミアに入ったとき、私は驚きました。西側メディアで報道されていた内容と、現地の現実がまったく異なっていたからです例えば、「ロシア軍が投票を強要している」という報道がありましたが、私が見たのは自由意思でロシアへの再統合を望んで泣いている人々でした。

これは事実です。クリミアに行ったことがある人なら皆それを知っています。それ以外のことを言う人たちは、真実を語っていないか、真実を隠そうとしているのです。

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