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目次
- トランプ外交とは何か
- フーシ派の攻撃
- 攻撃の開始:
- 攻撃の停止:
- 攻撃の再開:
- ウクライナ和平交渉
- イスラエルの分裂
- フーシ派に対する攻撃
トランプ外交とは何か
2025年3月15日(土)、アメリカはフーシ派の爆撃を開始した。これに関してYoutube上で直ぐにいくつかのアメリカのチャンネルが取り上げていた。
”中東の悪い奴らを懲らしめるためにトランプが爆撃した”という論調ののっぺりした通常報道も多かったが、シカゴ大学のJohn Mearsheimer 教授、コロンビア大学のJeffrey Sachs教授、元国連査察官のScott Ritter の話には、驚愕と落胆と怒りが滲み出ていた。彼らは、党派性から自由な視点で起きていることを観察し、現実的な解釈を探ろうとしている部類の人たちだ。
彼らはトランプ政権のウクライナ戦争に対する初期の取り組みに大方ポジティブな見方をしていたし、とりあえず停戦に持ち込んだガザ・ホロコーストへの取り組みにもある程度の期待を見せていた。スコット・リッターは、中東のリビエラ計画という騒ぎもトランプらしいこけおどしという見方をしていた。
つまり、フーシ派爆撃までは、とりあえず戦争忌避というトランプが選挙期間中、常に見せていた態度は、事実としてまだ一貫していることを確認することにやぶさかではなかったのだ。上にあげたJohn Mearsheimer教授、Jeffrey Sachs教授、Scott Ritterの3人の画面に現れる怒りは隠しようがない。Mearsheimer教授や、Sachs教授はさすがに、丁寧な姿勢を崩さないが、スコット・リッターなどはカメラに向かって「トランプはバカだ」と罵っていた。
トランプ政権によるフーシ派爆撃は、トランプ外交の全てを崩壊させるものかもしれない。それくらいの破壊力を持った事件だと言える。トランプ外交とは何かについて確定的なことを言うのは、まだ早いかもしれない。しかし、アメリカ第一主義(America First)というトランプの主張は、もともとの彼の人格的特異性から言ってもゆるぎないだろう。それがどう現れるかはまだ見えない。もう一つの柱は、戦争忌避傾向だ。これも彼はなんどもスピーチやインタビューで自分の自慢話として繰り返している。思想というよりも、性格的な厭戦癖のような側面と、徹底した現実的な損得勘定から見て、戦争は彼に取ってまったく得策ではないという事実がある。彼はこれまでの大統領と違って、戦争をして大儲けをするディープ・ステート的ネットワークの部外者なので、自分にとって一銭の得にもならない戦争にはまったく未練がない。
つまり、トランプ外交と呼ばれるものが、どのような具体的な形をとるかはまだ見えてないというべきだが、世界におけるアメリカ覇権をもう一度確立する(America First)ということと、それを戦争を回避しながら達成するということ、この二つの柱は、トランプ外交の中心であった。この点で、ウクライナとイスラエルに武器・弾薬・お金を垂れ流し続けたバイデン・ハリス政権とはまったく異なる。戦争に垂れ流された米国民の税金は、莫大な富として、人道的でリベラルな守銭奴エリート層に還流していたのだが、それを止めたトランプに対する彼らの恨み、辛み、怒りは激しい。それゆえに必死になって戦争を焚き付ける彼らはまとめてしばしば Warmongers と呼ばれる。
トランプ政権によるフーシ派爆撃に話を戻すと、これはトランプ外交の路線から外れたものだというのが、上の3人の評価だった。戦争忌避と言っておきながら、実際に爆撃したじゃないかというのが直接的な反応だが、それ以上に、この爆撃の性質がイスラエルのガザ・ホロコーストを助長するものであるという点で戦争忌避どころではないというのが上記3人の怒りの大きな理由だ。中東のリビエラ計画は、トランプらしいはったりで、どうせ言葉だけだと笑い飛ばす人もいたが、フーシ派爆撃は実際に武力を使った攻撃なのだから、そういうわけにはいかない。
フーシ派の攻撃
そもそもフーシ派についてあまり馴染みのない人が多いかもしれないので、これまでの経緯を簡単に説明しておく。
攻撃の開始:
- 2023年10月7日:ハマスがイスラエルを攻撃(アル・アクサの洪水作戦)。イスラエルは、報復という名目で、ガザへの空爆と地上侵攻を開始。
- 2023年10月19日:フーシ派がイスラエルのガザ攻撃に抗議して、紅海で米海軍の駆逐艦USSカーニーをミサイル攻撃。これが紅海での攻撃キャンペーンの始まりとされる。
- 2023年10月31日:
- フーシ派声明発表。「パレスチナの人々を支援し、シオニストの犯罪を阻止するため、我々はイスラエルに対する攻撃を開始した。紅海を通る敵の船舶は我々の正当な標的だ。ガザへの侵略が止まるまで攻撃を続ける。」
- 紅海での攻撃を「パレスチナ解放のための戦い」と位置づけた。
要するに、フーシ派はパレスチナ人を助けるために、紅海を通るイスラエル関連の船舶、米国および同盟国の軍艦・軍事資産、イスラエルと経済的関係を持つ国の船舶を攻撃し続けてきた。
攻撃の停止:
2025年1月19日:トランプの大統領就任式の1日前に、トランプの特使スティーブ・ウィトコフらの活躍により、ガザ停戦協定が成立した。フーシ派はガザでの停戦を支持する声明を出し、紅海およびアデン湾での商船や米軍・イスラエル関連目標への攻撃をピタッと停止した。つまり、これは、フーシ派の紅海での攻撃の理由が「ガザでのイスラエルの軍事行動への抗議」であったので、停戦によりその理由が一時的に解消されたからだった。
攻撃の再開:
2025年3月2日:ところが、イスラエルは停戦協定を破り、ネタニヤフは、すべての物資と人道支援のガザへの搬入を停止すると声明を発表した。この日以降、ガザへの援助トラックの搬入が完全に停止し、エジプト側のラファ国境や他の検問所でトラックが足止めされた。援助機関は、食料、医薬品、燃料などの搬入が遮断された。
2025年3月11日:フーシ派は攻撃再開を宣言する。「イスラエルがガザへの人道支援を停止したことは、民衆に対する新たな戦争だ。我々は紅海での作戦を再開し、シオニストとその同盟国を標的にする。ガザが解放されるまで戦いは続く。」
3月12日~14日:フーシ派による攻撃開始。フーシ派は宣言後、速やかにミサイルやドローンを使用して、紅海を通過する商船や米軍のMQ-9リーパー無人機を標的に攻撃再開。
2025年3月15日:トランプ大統領の指示の下、米軍がフーシ派拠点を大規模に空爆。
スコット・リッターは、フーシ派は原理原則の人々であると言うが、上の経緯を見れば、彼らは確かに言った通りのことをやっている。イスラエルによるガザ・ホロコーストを止めさせることを目的にして、イスラエル、アメリカ、その他イスラエルを支持している船舶を攻撃し、イスラエルがガザ攻撃を停止すると、フーシ派もピタッと攻撃を止めた。イスラエルが停戦決議を破れば、フーシ派も攻撃を再開する。自らの言葉にまったく忠実ではないイスラエルとアメリカとは対照的な人々であることが歴然としている。
以下に、「フーシ派を攻撃するとは、なんて愚かなんだ(How Foolish to Attack The Houthis)」というタイトルの動画で話されていることをほぼ全部、日本語に翻訳した。ナポリターノ判事の質問に、スコット・リッターが答えるという形で話は進む。
全体は三つのトピックに分かれている。一つ目が、ウクライナ戦争の停戦交渉について。ここで、リッター氏は、アメリカの交渉団の稚拙な戦略をこきおろしている。
二つ目のトピックが、イスラエル国内でのネタニヤフの反対派の動きについての話。これは今日(4月15日)もイスラエル国内での反ネタニヤフの動きについての報道があったが、どういう展開になるか注視する必要があるだろう。
三つ目のトピックが、アメリカによるフーシ派爆撃について。ここで、この爆撃がいかにバカげたものであるかをリッター氏は話している。
元動画:Scott Ritter : How Foolish to Attack The Houthis.
チャンネル:Judge Napolitano – Judging Freedom
配信日:2025年3月18日
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