【Caitlin’s】イスラエルが病院を爆撃し、ジャーナリストを「ジャーナリズム活動を行ったために」殺害したことを認める。

注:上のカバー写真に写っている人は、この記事に登場するアスリフ氏とは別のジャーナリスト。

これは、Ray of Letters メンバーシップのメンバー限定記事です。詳しくは下記ボタンをクリックして、案内をご覧ください。

目次

  1. まえがき
    • 1. 真実の封殺
    • 2. 情報戦・プロパガンダ
    • 3. 見せしめと威嚇
    • 4. 法の支配・国際秩序の破壊
      • ① 世界人権宣言(Universal Declaration of Human Rights, UDHR)第19条
      • ② 市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)第19条
      • ③ 国際人道法(武力紛争下での報道の自由)
      • ④ 地域人権条約(補足情報)
      • ⑤ 国連およびその他の機関の見解
    • 5. 社会全体の情報と意識の喪失
    • 6. 「文明の試金石」としての意味
  2. イスラエルが病院を爆撃し、ジャーナリストを「ジャーナリズム活動を行ったために」殺害したことを認める。

まえがき

ジャーナリストが殺されたというニュースにもう皆さんは慣れてしまっただろうか?あまりにたくさんのジャーナリストがイスラエル軍によって殺されてきたので、もうニュース性を感じないかもしれない。どれくらい殺されているのか。

国際ジャーナリスト連盟は、ガザでの戦争が始まって以来、少なくとも160人のメディア関係者が殺害されたと記録している。ガザ当局は、意図的に狙われたとして215人のジャーナリストが殺害されたと述べ、死者数を実際より多く発表した。イスラエルはこの非難を否定し、民間人に危害を加えないように措置を取っていると主張している。

胸糞の悪い記事だが、こういうイスラエルの言い草にも、もう皆さん慣れているかもしれない。

2025年5月13日、また一人、著名なジャーナリスト、ハッサン・アブデル・ファタ・モハメッド・アスリフ氏(Hassan Abdel Fattah Mohammed Aslih;以後、ハッサン・アスリフ氏と表記する)がイスラエル占領軍によって殺された。

海外の大手メディアは報道したが、日本の大手メディアはまるで箝口令でも敷かれたかのように沈黙している。僕が見つけられないだけかもしれないが、日本語では、このジャーナリストの暗殺を取り上げたのは、弱小メディア(しかも海外資本のようだ)だけのようだ。下にいくつかの例をあげておく。

海外メディア:
BBC:Gaza journalist Hassan Aslih killed in Israeli strike on hospital
REUTERS:Israeli strike on Gaza hospital kills wounded journalist

日本語メディア:
ENTREVUE.fr:イスラエル軍によるガザ病院攻撃でジャーナリストが死亡、怒りと論争を巻き起こす
ARAB NEWS:イスラエルによるガザの病院への攻撃で負傷したジャーナリストが死亡:ハマス発表

ハッサン・アスリフ氏は、約1か月前、イスラエル占領軍がジャーナリスト数人が住むテントを攻撃した際に負傷し、ハーン・ユニスのナセル病院で治療を受けていた。イスラエルはハッサン・アスリフ氏のジャーナリストとしての活動がよほど我慢がならなかったのだろう。病院で治療中の人間のとどめを刺したのだ。

ジャーナリストの生命は、一般人の生命よりも価値が高いなどと言いたいわけではない。生命の価値は全ての人にとって等しい。ジャーナリストを殺害するというのは、一人の生身の人間の生命が奪われるだけでなく、社会におけるジャーナリズムの機能を殺すことに深刻な問題がある。ケイトリンさんの記事に入る前に、ジャーナリストが殺害される意味を一度整理しておく。

1. 真実の封殺

ジャーナリストは、一般人が必ずしも行くことのない現場で目撃した事実を世界に伝える存在だ。彼らを殺す人間というのは、「記録されること」「暴かれること」「外部に知られること」を恐れている、もしくは都合が悪いと思っている人間なのだ。一般人は騙される立場に置かれる。

2. 情報戦・プロパガンダ

ジャーナリズムを司法・行政・立法の次に来る第四の権力であるとしばしば言及されるが、別のアングルからは、ジャーナリズムは軍事行為と並ぶ「第四の戦線」と呼ぶことも出来る。つまり、現代の戦争は、物理的な戦闘に加えて「情報支配」をめぐって戦われている。権力は常に「正当化された物語」を発信し続ける。真実を追うジャーナリストは、それに意義を唱える。ジャーナリストの殺害は、情報戦力を破壊するという意味があるのだ。

3. 見せしめと威嚇

ジャーナリストを殺すことには、他のジャーナリストへの沈黙圧力という効果がある。「同じ目に遭いたくなければ来るな」「報道するな」というメッセージが間接的に発信されている。一般人であっても、一切政治に関わることに口を閉ざす人がいるのだから、公に目立つジャーナリストならなおさら、ビビるだろう。ヘタレというのは簡単だが、実際本物のビビらないジャーナリストの勇気には敬意しかない。

4. 法の支配・国際秩序の破壊

報道の自由は国際人権法で保障された基本的権利だ。ジャーナリストを殺すということは、国際的な法秩序への公然たる挑戦なのだ。国際人権法については、いつかまた別稿にするが、根拠となる条約をリストにしておく。

すみません、ここから先は、Caitlin's Newsletter 日本語版のメンバー専用エリアになってます。メンバーの方はログインすると読むことができます。

まだメンバーでない方は、こちらの案内をご覧ください。

★読んで良かったなと思ったら、投げ銭もお願いします!

  • Copied the URL !
  • Copied the URL !

Comments

To comment

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.