チョムスキー:イラン・イスラエル核論争について

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チョムスキー:イラン・イスラエル核論争について

この動画は、ブラウン大学で、2010年4月10日に行われたノーム・チョムスキーの講演の一部です。この段階で、チョムスキーは、核爆弾を巡るイラン・イスラエルの問題を正確に描写していました。今、米政権が聞くべき話は全部ここにあります。重要な知識だと思うので、慣れない字幕付けをやってみました。

テキストで全文読みたい方は、下をお読みください。訳註を文中に追加しています。


聴衆の質問者):
こんにちは。まず、来てくださって本当にありがとうございます。
あなたが私たちと共有してくださったことを聞いて、多くのことを学びました。

私の質問は、特にイランと核兵器に関するものです。そして、あなたがイランと国際社会について議論していたことに関連しています。

私はある国が、防衛の一形態として核兵器を取得したり、自前で開発するという考えを確かに理解しています。

また、核兵器を持っていることで、他の超大国と見なされている国々と同じ国際的地位に立つ、あるいは超大国と同等と見なされる国々と同じレベルにあるという状態を目指すという点も理解できます。

しかし、ある国が核兵器を開発しようとしている、あるいは取得しようとしていることを公然と行い、さらに、他の国を抹殺するぞと脅し、その国は存在してはならないと主張している場合には、どうすればよいのでしょうか?

これは、私たちが今直面している2つの非常に大きな問題だと思います。そして、あなたはそれについて特に触れていなかったように思うので、あなたの考えを伺いたかったのです。

ノーム・チョムスキー:
そうだね。核不拡散条約の枠外で核兵器をすでに開発し、日々、国連安全保障理事会と国際原子力機関の決議に違反している国々に対しては、どうすればいいでしょうか?それが、もっとずっと深刻な問題です。

聴衆の質問者):
それは別の状況です。なぜなら、それらの国々は、他国を抹殺すると公然と脅しているわけではありません。

ノーム・チョムスキー:
イランもそうではありません。ちょっと彼らの発言を見てください。彼らの発言は、「我々は…」というようなものではなく——彼らはこう言いました。

実際、それはホメイニの時代にまで遡ります。つまり、イスラエルとイランの同盟があった時代です。そしてその頃、イスラエルはそれを気にしていませんでした。

訳註:チョムスキーの言う「イスラエル・イランの同盟」は*公式な外交関係ではなく、「実利的な裏協力」を指しています。1979年のイラン革命で、パフラヴィー王朝が倒れるまで、イスラエルとイランは密接な協力関係にありました。しかし、1979年のホメイニ政権発足後、ホメイニはイスラエルを「悪の体現」として激しく非難し、公式な外交関係は完全に断絶し、表向きは敵対関係になりました。しかし実際には、イラン・イラク戦争(1980–1988)で、ホメイニ政権は敵であるイラク(サダム・フセイン)との戦争で苦戦しており、武器供給が喫緊の課題でした。イスラエルは、イランがイラクと戦うことでイラクの軍事力が削がれれば、イスラエルへの脅威が減ると判断し、イスラエルはアメリカの仲介を得てイランに武器を密かに売却(イラン・コントラ事件)していました。チョムスキーが言っているのは、この頃のイスラエル・イラン関係のことです。

この発言は、繰り返し繰り返し引用され続けています。
その発言とは、「時の流れの中で、イスラエルはもはや存在しなくなるべきだ」というものです。

実は、私自身もそれに賛成しています。実際、イスラエル国内にもそう考える人が多くいます——単一の民主国家があるべきだと考える人々です。

それは、誰かを抹殺しようとする呼びかけではありません。
実際、イランは二国家解決に関する国際的コンセンサスを支持してきました。

実際には、「ある国の存在を否定するだけでなく、実際にその国を破壊している国」が2つあります。
つまり、アメリカとイスラエルです。

それが、彼らのパレスチナ人に対する立場なのです。
そして彼らは、それを口にしているだけではありません。
[聴衆拍手]

強調しておきますが、彼らはそれを言っているだけではなく、実際に日々実行しています。それが、私たちの目の前でガザとヨルダン川西岸地区で進行している政策の意味なのです。そして、私たちはそれを支援し、資金を提供しています。

ですから、確かに他国の破壊を呼びかけてはならず、それを実行してもいけません。実際、イスラエルの公式立場は——アメリカの支持のもとで——多少修正はされましたが、約20年前の公式立場では、当時の連立政権(労働党とリクード)はこう言っていました:
「ヨルダンとイスラエルの間に、さらなるパレスチナ国家は存在できない」

つまり彼らはこう宣言していたのです。そしてアメリカもそれを支持していました。「すでにパレスチナ国家は存在している、それがヨルダンだ」と。

しかしパレスチナ人は異議を唱えます。彼らは「ちょっと待ってくれ、それは我々の国家ではない」と言うのです。
しかし、誰が彼らの意見など気にするのでしょうか?

我々は「それがお前たちの国家だ」と言い、そして「もう一つは存在できない」と言い放つのです。これは、単に他国の破壊を呼びかける以上のことです。

つまりこういうことです——例えば、もしアフマディネジャドが「ユダヤ人にはイスラエルは必要ない。なぜなら、彼らにはすでにニューヨークがある」と言ったとしたら。
[聴衆笑い]

訳註:ニューヨークにはユダヤ人がたくさん住んでいます。「ニューヨークはアメリカではない、ニューヨークだ」とよく言われます。それくらいアメリカの他の地域と異なった人口構成、文化、雰囲気があります。アフマディネジャドの言葉は、それを皮肉っぽく言った冗談です。

いいでしょう、つまり、我々はそれをナチズムの復活だと呼ぶでしょう。しかし、それこそがかつてのアメリカとイスラエルの公式立場だったのです。

それにしても、語るべきことはたくさんあります——
ちなみにイランについて言えば、正気な人であれば誰もイランに核兵器を持ってほしいなどとは思いません。あるいは他のどんな国であっても。

それは確かにひどい政権です。しかし、間違いなくこの地域にはそれよりももっとひどい政権があり、しかも我々の同盟国です。私はイスラエルのことを言っているのではなく、他のアラブ諸国のことを言っています。

サウジアラビアと比べれば、イランはまるで「市民権の楽園」のようにさえ見えます。
[聴衆笑い]

訳註:これも皮肉です。サウジアラビアはアメリカと仲良くしている国ですが、アメリカが激しく人権状況を糾弾しているイランの方がサウジアラビアよりはるかにましだという皮肉です。

とはいえ、それでもひどい。間違いありません。そして、それに対処する方法もあります。たとえば、非核兵器地帯を目指すことなどがそうです。

しかし、戦略アナリストたち——イスラエル人を含む——の間では、イランが「核兵器保有能力」を目指している理由については疑問の余地がありません。

それは、実際に「核兵器を持っている」ということとは違います。それは、「核兵器を持つことが可能な状態にある」ということです。

これは、ほとんどの先進工業国がそうである状態です——日本、イタリア、他にも多くの国々。

理由は非常に簡単です。それは、イスラエルの著名な軍事アナリスト——非常にタカ派の——マーティン・ヴァン・クレフェルトによって数年前に説明されています。イラク侵攻後、彼はこう書いたのです。

「イランが核兵器を開発しているかどうかは分からない。私はそうでないことを望む。しかし、もし開発していないのであれば、それは狂気だ」と。それが彼の言葉でした。「開発していないなら狂っている」と。

アメリカはこう宣言したところです:
「我々は、気の向いた相手を攻撃し、無傷で侵略できるならそうする。だから、お前たちは抑止力を持たなければならない」

訳註:これはブッシュが宣言した先制攻撃ドクトリンのことです。2002年9月20日に発表された「国家安全保障戦略(National Security Strategy=NSS)」で、アメリカ合衆国が「脅威を予期して先に武力を行使する」ことを正当化するという「先制攻撃ドクトリン」が公式に表明された。法学的なコンセンサスは「否定的」が主流。

ですから、たぶん彼らは抑止力を開発しているのかもしれません。

まともなアナリストで、イランが核兵器を実際に使用するだろうと考えている人は一人もいません。もしイランが核兵器とミサイルを持っていたとして——誰も望んでいませんが——彼らがそれをミサイルに搭載しようとしただけで、イランという国は一瞬で蒸発するでしょう。何らかの疑いがあるだけでも。

イランの聖職者たちは、たしかにおぞましい存在かもしれませんが、彼らはこれまで、自分たちの持つすべてを破壊して自殺するような傾向はまったく示していません。

他者への核兵器のリークについても同様です。もしそんなことをしているという疑いがかけられたら、その時点でイランは終わりです。

彼らがそれ(核兵器)を使う確率は、おそらく「小惑星が地球に衝突する」程度のものです。

それは確かに深刻な問題です。実際、イスラエルの文献を見れば、彼らはかなり率直にこう言っています。
「イランの核兵器の本当の脅威は、イスラエルに対するものではなく、“シオニズム”に対するものだ」と。

彼らが恐れているのは、地域があまりにも危険になれば、イスラエルの人々が出て行ってしまうことです。移動の能力を持つ人々——より教育を受け、より裕福で——が、「このような脅威のある地域には住みたくない」と思って、去っていくのです。

そして実際、教育を受けた人材の移住は非常に深刻な問題です。教育を受け、訓練を受けた層が国外に流出しているのです。だから彼らは、そうした脅威に直面したくないのです。

しかし私は、イランが核兵器を使うかもしれないという脅威を現実のものとして語るような、まじめな戦略アナリストをこれまでに一人も見たことがありません。
もしそれを実行したら、それは完全なる自殺です。

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