大阪の町中華

遅い昼飯を求めてぶらっと町中華に入ってみた。テーブルが2つにカウンターが8席ほどあった。カウンターの中でおじいさんが一人調理をしていた。外回り兼レジ要員に若めの女性が一人働いていた。

テーブル一つには高齢カップルが料理を3、4種類とってビールを飲んでいた。 店内はところ狭しと段ボール箱が積み上げてある。ちょっと暑いのでジャケットを脱いで壁にいっぱいぶらがってるプスチックのハンガーを一つ取った。

ん?

と思った。ハンガーがねばついていた。よくあることだ。誰にも気づかれないように、そっとハンガーを壁にかけ直して、ジャケットは膝の上に置くことにした。

注文をして一人だけのカウンターで待っていると、カップルがもう一組入って来た。また高齢カップルだ。おそらくこの時点でこの狭い店内の平均年齢は70を超えていただろう。

新カップルは空いてるテーブルに陣取った。女性の方が若干耳が遠いらしく、気弱な感じの男性がボソボソ喋るのでなかなか聞き取れない。女性はしきりに、

えー?なやてぇ?

を大きな声で繰り返す。その度に男性はなにかボソボソというのだが、誰にも聞き取れない。いや、他人は聞かなくていいんだが、その頃には店内にいる全員が、そのおじいさんの言いたいことを必死に聞き取ろうとしてていたと思う。

カラアゲェ?そんなん食べれんの?

ほな、頼むで。ええのん?

「ボソボソ」 ようやく声の大きい女性はカウンターの中のおじいさんに向かって「ほな、すんませんーん、カラアゲ一つと餃子一つと生中と酎ハイ一つお願いしますぅ」と注文を完了した。

店内一同ほっとした。しかし、耳の遠い女性と声の小さい男性って最強カップルやないか。不覚にも今まで気が付かなかったわ。

一同がそれぞれの持ち場に帰ったところで、僕が注文した焼きそばと餃子が出て来た。

冷蔵庫に残った有り合わせで作ったような、どちらかと言うと見栄えがパッとしない焼そばが、食べてみると美味過ぎた。これが530円。

対照的に絶対美味しいに決まってる風情の餃子が当然爆うまだった。これが290円。

ドル換算してはいけないと思いながらも、無慈悲な暗算力が稼働して4ドルしない焼そばと2ドルしない餃子の破壊力を暴露してしまう。 大阪の町中華には神が宿ってるなあと思った。

投げ銭

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