【Caitlin’s】このディストピアでは、人殺しを賭博に使う

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  1. まえがき
    • スナッフ映画(Snuff video / Snuff film)
    • サラエボ・サファリ(Sarajevo Safari)
    • スデロット・シネマ(Sderot cinema)
    • 何が起きているのか?
  2. 【Caitlin’s】このディストピアでは、人殺しを賭博に使う

まえがき

これを今読んでるあなたは、誰かがいつ殺されるかを予測する賭けに参加できますか?
例えば、あなたの家族を憎んでいる家族がいる。殺すぞとしょっちゅう脅している。
それを聞いて、近所の人は、いつ、その家族があなたの家族を殺すかを巡って、賭けをしている。

異常な世界に見える。しかし、ケイトリンさんの今回の記事はそれが文明の現在であることを示している。

Kalshi(カルシ)Polymarket(ポリマーケット)を日本語圏で聞くことは少ないだろうと思うが、英語圏のYouTube では、今ではしょっちゅう聞く。これらは、政治・経済・社会的出来事の結果について「予測市場(prediction market)」の形で賭けを行うオンライン・プラットフォームだ。

予測市場とは、ある出来事(例:選挙結果、政策決定、戦争の発生有無など)が起きるかどうかについて、参加者が金銭を賭け、その市場価格(オッズ)をもって「発生確率」を示す仕組みであり、建前上は「集合知による予測」や「情報集約メカニズム」と説明され、新しいものではない。

しかし、ケイトリンさんがここで取り上げているのは、これらのプラットフォームでは、
• 「○月○日にアメリカがイランを攻撃するか」
• 「特定地域で軍事行動が発生する確率」

といった、実際の戦争・軍事行動・大量殺害に直結しうる事象が賭けの対象とされている点だ。倫理基準は計算に入らない。これらは「人の殺害」を伴う行動だ。しかし、お客は、お手軽にオンラインで、架空ではなく現実に存在する「人の殺害」をネタに賭けをする。人を殺すことが、娯楽の対象になっているのだ。ここで直ぐに連想するいくつかのことがある。

1. スナッフ映画(Snuff video / Snuff film)

実際の殺害を目的的に撮影し、鑑賞・流通させるとされる映像。商業的に流通する娯楽目的の「スナッフ映画」は都市伝説に過ぎないと結論づけられるが、連続殺人犯のホームビデオ(Luka Magnotta)、児童性虐待ビデオ(Daisy’s Destruction)、殺人・解体動画(2025年「The Vietnamese Butcher」)などは実在する。

2. サラエボ・サファリ(Sarajevo Safari)

1990年代のボスニア紛争、特にサラエボ包囲戦(1992–1996)では、市民(子どもを含む)を狙うスナイパー行為が日常化していた。一部の狙撃行為が撮影され、第三者に見せる/売る、あるいは娯楽的に共有されていた。これらの事例は、戦後「旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷(ICTY)」の証言・捜査で明らかになった。

ここまでは、当時まだ現役の国際公務員だったのでむしろ業務上の知識として知っていた。ところが、最近SNS上でドキュメンタリー映画『Sarajevo Safari』(2022)をきっかけに、イタリア・ミラノ検察庁が2025年11月に捜査を開始したと報じられ、30年前の民間人をスナイパーが狙撃する問題がまた浮上してきた。

『Sarajevo Safari』は1992〜1996年のボスニア戦争中に富裕な外国人が仲介者に金を払って、民間人を狙撃していたとされる「戦争観光(war tourism)」の存在を描き、論争を呼んだ。 「人間サファリ(human safari)」とか「人間狩り(man-hunting)」いう言葉もしばしば使われている。 

A new documentary, ‘Sarajevo Safari,’ shows how “manhunting” tours occurred during the war against Bosnian.

Rich foreigners paid for the chance to shoot at civilians in the besieged Sarajevo from Serb army positions.

pic.twitter.com/znAaHzQ4ia— Smajo Bešo OBE (@SmajoBeso) February 22, 2023

A month after a new probe opened into the Sarajevo ‘human safari’, a former militia leader whose testimony might have been key to unlocking the truth has died unexpectedlyhttps://t.co/Jj7gWQ7BNX— Tom Kington (@tomkington) December 19, 2025

3. スデロット・シネマ(Sderot cinema)

2023年10月7日以来、イスラエルによるジェノサイドを記録した映像がSNSで世界中に出回り始めた。それらの中で、フェイクではないと確認が取れるものは、国際司法裁判所に南アフリカ政府によって提出された。

SNSで拡散された動画の中に、イスラエル人が丘の上に集まって、ガザの爆撃を見学する動画がある。彼らは人が殺されていく景色をリアルタイムで目の前にしながら、ポップコーンを食べて、何かを飲みながら、仲間たちと何事かを話している。イスラエルのメディアは、それを「Best show in town(街で最高のショー)」と呼び、メジャーな海外メディアも大きく取り上げた。

The Israeli channel called it “the best show in town.”

A daily gathering spot for thousands of Israelis to watch Israel’s bombing of northern Gaza. pic.twitter.com/hvLWjvd3Fc— Eye on Palestine (@EyeonPalestine) July 14, 2025

Remember this?

“Israelis gather on hillsides to watch and cheer as military drops bombs on Gaza.

People drink, snack and pose for selfies.”

Is someone doing the same to Tel Aviv now?#Israel #Iran pic.twitter.com/AN2MIfnsx8— S.L. Kanthan (@Kanthan2030) June 15, 2025

Reality: Israeli Jews enjoy the massacres of Palestinians and have installed a lookout in Sderot where they take their kids to watch Gaza being razed to the ground live.

To the best of my knowledge this is the only case of a materially well-to-do population engaging in such… https://t.co/u1VwfGNV1b pic.twitter.com/mf3BVAD3N5— The Hasbara Buster (@ibrahimibnyusuf) January 22, 2026

この光景は、2023年10月7日の後、始まったものではない。下のXへの投稿は、ニョーヨーク・タイムズ紙の記事を引用している。その日付をよく見てほしい。2014年7月15日だ。この時のhelplessnessは痛烈に残っている。その7年前にフィールド勤務を終えて、その頃はニューヨーク勤務だったが、ガザを含めてほとんどの戦地に同僚がいた。ニューヨークの部下たちの中にはユダヤ人もパレスチナ人もいた。政治も思想も宗教も民族も何もかも津波に流されるような中で、一人でも多くの命を救うことだけに全員が一点集中していた。国連の外面と中は全然違う。説明しても伝わるわけがない。大東亜戦争から帰ってきた日本兵のように職員は沈黙する。

当時、この丘の上のイスラエル人たちの虐殺見学をSderot cinema(スデロット・シネマ)と呼ぶようになった。スデロットという町の丘の上にイスラエル人がガザ爆撃の見学に集まったからだ。そのスデロット・シネマが、2023年以降、再開したのだ。

This article is from 2014. It didn’t start on October 7.https://t.co/yOFr05XB16 https://t.co/9DHpQoHJsB pic.twitter.com/uYvCLq9eJu— Comrade Misty is Putin’s Buddy (@SarcasmStardust) December 30, 2025

何が起きているのか?

上に挙げた三つの例、1. スナッフ映画、2. サラエボ・サファリ、3. スデロット・シネマ、そして今回ケイトリンさんが取り上げたKalshi や Polymarketには共通するものがある。それは第一に「人の殺害」に対する感情の麻痺と言えるかもしれないし、第二に倫理の崩壊と言えるかもしれない。ここで思いつく限りの罵詈雑言を叫んで終わりたい。しかし、それではこの恐ろしく非人間的だと感じる行為は終わらないだろう。

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