今回取り上げる本は、金子光晴著の『絶望の精神史』です。出版されたのは、1965年(昭和40年)。池田内閣が国民所得倍増計画を発表した1960年から5年後、日本経済が計画以上の”奇跡”の成長を達成しつつある頃です。
金子が生まれたのは、1895年(明治28年)、日清戦争が終結した年です。子ども時代に日露戦争の”勝利”による高揚を経験し、青年時代の大正デモクラシーを経て、世界大戦へ突入する日本を体験し、敗戦後の混乱から高度成長期までを生き延び、1975年(昭和50年)80歳で亡くなりました。日本という国が目まぐるしく変貌し続ける時代を生きた人です。
彼は、24歳の時、1919年(大正8年)から2年間の洋行に出ます。それから、もう一度、1928年(昭和3年)33歳の時に4年間の洋行に出て、中国、東南アジア、ヨーロッパにいる日本人たちに出会います。
時代の変遷と異なる土地での体験を通して、彼は一貫して変わらないものを日本人の中に見続けたと私は思います。
目次
まえがき
1. 絶望の風土・日本
1) 絶望とは、何か
2) 逃げ出せない日本
3) 水蒸気の多い心象
2. ひげの時代の悲劇
1) ひげのある人生
2) ひねくれ者と孤独者
3) 明治の青年を苦しめたもの
3. ヨーロッパのなかの日本人
1) ご真影
2) エトランゼのゆくえ
3) くずれゆくもの
4. 焦燥する<東洋鬼>
1) 中国のなかの日本人
2) 両親は、とても承服しない
5. またしても古きものが
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