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目次
- マージョリー・テイラー・グリーン(Marjorie Taylor Greene)とは何者か。
- MAGAの内部分裂
- MAGAは崩壊するのか?
- 個人崇拝
- 民主党の非・批判
- 徴兵制
- 私の息子は絶対に戦争に行かせない
- 選挙の約束
- 戦争の現実
- 名前のある人間
- 「制限はない」
- 戦争の代償
- 165人の女子児童の死
- 続く子どもへの爆撃
- 爆撃の責任
- 調査と疑惑
- 平和の大統領
- 徴兵の問題
- 母として
- 戦争を煽る人たち
- 最後の言葉
2月28日にアメリカがイランへの軍事攻撃を開始して以来、アメリカのテレビや新聞では連日、この戦争の行方が大きく報道され、激しい議論が続いている。日本の新聞・テレビではどれくらい報道されているのか分からないが、日本語SNSでは、かなり多くがAI翻訳のおかげで投稿されるようになったと思う。
しかし、戦況や、経済的インパクトの詳細についてnoteで記事にしても、直ぐに古い情報になってしまうのであまり意味がなさそうだと思いながらYouTubeを見ていたら、マージョリー・テイラー・グリーン(Marjorie Taylor Greene。略してMTG)が喋っている動画が出てきた。10分ほどカメラに向かって喋ってるだけの動画だが、彼女の言っていることは、もうすぐ日本の母親たちが思うことではないかと思いながら、見ていた。
マージョリー・テイラー・グリーン(Marjorie Taylor Greene)とは何者か。
彼女は、ジョージア州選出のアメリカ連邦議会下院の共和党議員で、2020年の選挙で登場した。トランプのMAGA(Make America Great Again)・アメリカ・ファースト運動の中でも最も熱狂的な支持者の一人として知られている。実際、あまりに強烈なMAGA信者なので、最近まで、この人、ちょっと極端すぎるんじゃないかと思っていた。
しかし、去年後半くらいから、彼女は公然とトランプ批判をするようになった。この動画の中でも、トランプに裏切り者と呼ばれていると言っている。この動画の中で、彼女は政治家というより、1人の母親として話しているのだが、その話には、彼女の意図とば別に、現在のアメリカの政治状況が非常に強く投影されている。
彼女は、トランプ陣営の最強の忠誠派であり、America First、反グローバリズム、反NATO拡張、反「終わりなき戦争(forever wars)」といったトランプ派の主張を最も強く訴える議員の一人としてMAGA運動の象徴的存在と見なされていた。
ところが、去年後半あたりから、彼女はトランプがウクライナ支援を止めず、予算をアメリカ国民に回さないことを公然と批判するようになってきた。海外で戦争なんかやらずにアメリカ国内の庶民の窮状を救えと激しくトランプに詰め寄る。かつてMAGAの急先鋒として磨いた牙をトランプに向け始めたのだ。それに対してトランプは彼女を裏切り者と罵倒する。
今回のイラン戦争では、彼女は「トランプは約束を破った」と猛烈に批判し始めた。彼女の論点は、トランプは、「外国との戦争を終わらせる」、「米兵を海外戦争に送らない」と言って選挙に勝ったのに、イラン攻撃を始めたのは、裏切りではないかということだ。特に、彼女の強い怒りは、トランプが徴兵の可能性を否定しない点に向けられる。
MAGAの内部分裂
MTGは、彼女1人孤立して突拍子もない主張をしているわけでない。
彼女の行動は、現在のトランプ陣営が二つの勢力に割れていることを象徴的に表していると言える。
⑴ ネオコンの系譜:MAGAの中には、戦争を熱狂的に支持する一派がいる。ブッシュ政権時代に非常に強い影響力を持ったネオコンの系譜だ。彼らは、イラン攻撃を支持し、イスラエルを強硬に支持する。トランプは、第二期大統領に就任した当初「ネオコンを追い出す」と言っていた。ところが、彼の周辺には、ネオコン系人物が戻ってきている。この一派は、他国への干渉を支持するので介入主義者とも呼ばれる。
この一派の代表的な人物が、トランプのゴルフ仲間であるリンゼイ・グラム(Lindsey Graham)だ。サウスカロライナ州選出の共和党上院議員で、長年にわたり米国の軍事介入を強く支持してきた外交強硬派で、イラク戦争なども積極的に支持した。熱烈なイスラエルの支持者であり、対イラン・対中国では特に強硬な立場を取る。
もう一人、この一派の代表的な政治家がテッド・クルーズ(Ted Cruz)だ。テキサス州選出の共和党上院議員で、イスラエルの強い支持者として知られ、中国に対しても強硬な立場を取るなど、軍事力を重視する外交強硬派である。今回のイラン攻撃についても強く支持している。政治評論家タッカー・カールソンとのインタビューでは、イスラエル支持をめぐる発言が大きな議論を呼んだ。2016年の共和党大統領予備選ではトランプと指名を争い激しく対立したが、トランプが大統領に就任して以降は、共和党内でトランプ路線を支持する立場に回っている。
政治評論家・ラジオ司会者のマーク・レヴィン(Mark Levin)も、この一派のメディア圏の代表的論客の一人として知られる。強くイスラエルを支持し、対イラン強硬論者で、軍事力による外交を積極的に支持している。
もう1人、この一派で目立っているのは、ローラ・ルーマー(Laura Loomer)だ。極右系の政治活動家・インフルエンサーの彼女は、トランプへの強い忠誠で知られ、MAGA運動の過激派と見られている。イスラム過激主義やイランに対して非常に強硬な立場を取っている。
⑵ アメリカ・ファースト原理:もう一方には、反戦のMAGA原理派がいる。彼らは、海外への介入に反対する反ネオコンであり、グローバリストに批判的、NATOの拡張に懐疑的で、終わりのない戦争に反対する。ウクライナ支援に反対であり、イラン攻撃にも反対する。アメリカ・ファーストの強い支持者である。彼らは、ナショナリストであり、非介入主義故に孤立主義とかモンロー主義的と呼ばれることがある。この一派に属する1人が、マージョリー・テイラー・グリーン(MTG)だ。
この一派には、おそらく日本でもプーチンのインタビューでわりと知られているであろうタッカー・カールソン(Tucker Carlson)がいる。彼は今アメリカで最も影響力のある保守系政治評論家の一人だろう。かつてはFox Newsの看板司会者で、現在はYouTubeを中心に活動している。ネオコンの外交や海外軍事介入を強く批判する。
スティーブ・バノン(Steve Bannon)もこの一派だ。トランプの2016年選挙の戦略家で、第一期トランプ政権の首席戦略官であり、MAGA思想の理論的中心人物の一人とされている。グローバリズムと終わりのない戦争に反対するナショナリストだ。
MAGAは崩壊するのか?
トランプの言動は、この二つの勢力の間を行ったり来たりして来たが、イランへの攻撃は、⑴のネオコン派に大きく振れたと見られている。しかし、MTGのようにそれに強く反発する勢力が出て来た。
MAGAのコア支持層は、退役軍人、軍人家族、労働者階級の白人層と言われるが、この層は、イラク戦争やアフガン戦争で非常に多くの犠牲を出し、海外戦争への嫌悪が非常に強いと言われる。その結果、⑵の勢力が強くなると見る人もいる。
この⑵の勢力がトランプ批判をすることで、日本語メディアでは、MAGAの崩壊とか、MAGA離れという表現を見るかもしれないが、それは少し違うだろう。彼らはむしろアメリカ・ファーストというMAGA本来の原理に忠実であるが故に現在のトランプの政策に反発しているだけで、MAGAが崩壊しているわけではない。彼らはMAGA運動の核を構成するMAGA原理主義者と言える。
個人崇拝
トランプの政治は、個人崇拝型だとよく言われる。つまり、政治思想よりトランプという個人との信頼関係を中心にして動いている。忠誠とか裏切りという言葉がよく出てくるのは、それを表している。
MTGも去年後半までは、トランプに心酔しているような発言を繰り返していた。それがトランプ個人の狂信者のように見え、ちょっとおかしいんじゃないかと思っていたのだが、この動画は非常に重要な転換を示している。つまり、トランプ個人を崇拝するから、トランプの政策を支持するというパターンはここに見られない。MTGは政策自体を批判している。この傾向が広がれば、トランプの個人崇拝型政治には痛手だろう。
民主党の非・批判
この動画の中で、MTGは民主党を一切批判していない。これはアメリカの政治家のスピーチとしてはかなり珍しい。普通はどんな問題でもまず敵対政党を攻撃するが、彼女はそれをしていない。つまり、「民主党対共和党」という軸でMTGの主張を見ることは出来ない。個人も政党も関係なく、MTGはトランプの政策そのものを批判している。
徴兵制
この動画の一つの大きな軸は、「1人の母として」話すという点にある。彼女がここまで強い言葉で語っているのは、徴兵の可能性が完全には否定されていないからだ。自分の息子が戦争に送られるかもしれないという恐れを、彼女は現実的なものとして語ることが出来る。これは多くの母親たちにとって響く言葉ではないだろうかと思った。
同じ言葉が、近い将来、日本の母親たちにも響くことがないことを願う。
以下に、彼女の話したことを日本語にしたが、いくつかのトピックに分けて、それぞれに小見出しと注をつけ足した。
私の息子は絶対に戦争に行かせない
元動画:Not My Son, Over My Dead Body — I Meant Every Word
配信日:2026年3月12日
私の息子は戦争に行かせない。そんなことをするなら私の死体を踏み越えてからにしろ。(注1)
私は日曜日にその言葉を投稿しました。そして、人生でこれほど本気でそう思ったことはありません。なぜなら、Fox News の全国放送で、マリア・バーティロモ(Maria Bartiromo)がホワイトハウス報道官カロライン・レビット(Karoline Leavitt)に、非常に単純な質問をしたからです。この国の母親たちが知りたがっていることです。
徴兵はあるのですか?
私の子どもはイランに戦いに送られるのですか?
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