【Caitlin’s】アメリカはベネズエラについて嘘をつきながら、戦争マシーンを配置に移している

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目次

  1. Regime Change(体制転覆)
  2. アメリカの干渉
  3. ニコラス・マドゥロという人間
    • パレスチナに関して
    • ウクライナに関して
    • BRICSに関して
  4. アメリカはベネズエラについて嘘をつきながら、戦争マシーンを配置に移している

Regime Change(体制転覆)

アメリカの言うことをきかない政権は、CIAやUSAIDを送り込み、民主化という名目のデモを起こし、選挙に介入し、主権を主張するような反米的指導者を消し、抵抗してきたら反政府勢力に軍事援助し、政権を転覆させ、親米政権に取り替える。それをRegime Change と呼ぶ。アメリカは、冷戦期から全世界で、これを繰り返している。

今回のケイトリンさんの記事は、アメリカがベネズエラ沖に戦艦や潜水艦を送り始めたことについて書いているのだが、トランプ政権の匿名の高官が「これはノリエガのパート2になるかもしれない」と語ったという話が出てくる。

「ノリエガのパート2」とは何か。ノリエガは「米国がregime change のために独裁者を育て、都合が悪くなると始末する」というパターンの象徴的人物として使われている。

アメリカの干渉

ベネズエラのマドゥロ大統領は、2018年5月に再選され、2019年1月に新任期が始まった。しかし、アメリカを筆頭とする西側諸国はそれが気に入らず、「不正選挙」として承認しないと言う。他国の選挙結果を承認するもなにもないのだが、ともかくそれを公言して止まない。

ここからは覚えている人もいると思うが、2019年1月、野党のリーダーであるフアン・グアイドが自分が暫定大統領であると宣言し、米国、EUと一部南米諸国がこれを承認する。そして、全国規模の反マドゥロ・デモが起きる。

一国の大統領がそこの国民に選ばれたのなら、つまり、ベネズエラの大統領がグアイドであろうが、マドゥロであろうが、他国が干渉するのは内政不干渉の原則に反する。

しかし、この全国的な大規模反マドゥロ・デモの裏側で、米国がグアイド陣営と歩調を合わせ、資金・外交・情報面で“政権移行を後押しした(regime change)ことは公的資料や報道で裏づけられている。

USAIDは人道・開発名目の大規模資金を拠出。直接の「政治家個人への資金供与はしない」としつつ、国民議会や暫定側の技術顧問費用等を援助資金で賄う場合があると説明。2019年2月の「国境越え支援」強行計画でも反対派を支援している。参考記事(↓)

NED(全米民主主義基金)はベネズエラのNGO等を長年支援。こうした外部資金が反マドゥロ野党・市民活動の能力を底上げしてきたことは同団体自身の年次報告等に明らかにされている。参考記事(↓)

2019年前後の米側の体制転換(regime change)工作(制裁・秘密作戦・軍人離反の促進)に関する詳細報道さえある。参考記事(↓)

つまり、当時、マドゥロ政権下では、石油価格の低迷や経済政策の失敗の上、米国制裁によって、ハイパーインフレと物資不足が深刻化し、数百万人が国外に流出する「難民危機」が発生していたので、その結果、マドゥロ抗議デモが自然発生的に広がった側面があったとしても、米国はそれを「支援し、活用した」ことは否定できない。

結局、軍部がマドゥロ支持を維持したため、実際の政権交代は起きなかった。現在もマドゥロは事実上の政権を握っている。

ニコラス・マドゥロという人間

彼は、1962年に生まれた。元はバスの運転手で、労働組合活動家から政治家に転じた。ウゴ・チャベス(ベネズエラ大統領・1999〜2013)の後継者として2013年に大統領に就任。チャベスの「ボリバル革命」(石油収入を背景にした社会主義的福祉政策と反米・反新自由主義の姿勢)を継承した。

彼は「反米左派」の象徴的存在であり、キューバ、ロシア、中国、イランといった国々との結びつきを強めてきた。一方で、米国やEUなど西側諸国は彼を「独裁者」と呼び、選挙の公正性や人権侵害が強く批判している。

マドゥロの内政は、社会主義的福祉政策反ネオリベで一貫している一方、外交は「反米・多極主義」で一貫している。

パレスチナに関して

マドゥロが外務大臣であった2009年、ベネズエラはパレスチナ国家を公式承認し、外交関係を樹立。以後、国連などでパレスチナを支持する投票・発言を続け、イスラエルの軍事行動を厳しく批判してきた。カラカスにパレスチナ大使館を設置。同年、イスラエルとの国交は断絶した。

2023年8月、ラマッラの駐在代表部を在パレスチナ「大使館」に格上げした。
2023年10月、ガザへ30トン超の人道支援物資を送付。
2024年1月、南アフリカが国際司法裁判所(ICJ)に提起した「ガザでのジェノサイド」訴訟を支持すると表明。
2025年7月、ガザでの行為を「ジェノサイド」と非難し、即時行動を求める書簡を国連人権高等弁務官に送った。パレスチナ問題の国際会議開催も提唱している。

ウクライナに関して

ウクライナに関しては、2022年2月の開戦直後から、危機の責任は米国とNATOにあると主張し、対ロ制裁を批判している。

2025年5月上旬に、マドゥロはモスクワを公式訪問し、5月7日にクレムリンでプーチン大統領と「戦略的パートナーシップ(協力)条約」に署名した。

BRICSに関して

また、マドゥロはBRICSを「人類の未来」と位置づけ、対米制裁に左右されない金融・貿易圏の構築(脱ドル)を一貫して支持している。

BRICS 加盟そのものを最優先の対外目標にしているが、2024年、加盟が見送りとなり、激しく反発し、ベネズエラの在ブラジル大使を一時的に召還した。

2025年、フルメンバー入りを目指す方針は不変と再表明し、BRICS諸国には石油・ガス開発への優先アクセスを与える用意があると公言している。BRICSの拡大を“対米依存からの出口”にすると考えている。

社会主義的福祉政策、反ネオリベ、反米、多極主義の姿勢で一貫し、パレスチナを承認し、ガザへ人道援助物資を送り、イスラエルと断交し、米国とNATOがウクライナ危機の原因を作ったと非難し、BRICSを人類の未来と言ったら、米軍がやってきた。我々は今そんな世界に生きている。


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