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表紙写真|1945年8月6日、日本の広島で原爆が爆発した後に残された広大な廃墟を見つめる男性。ここでは約14万人が即死した。写真|AP通信
今回は、広島・長崎への原爆投下80周年に合わせて、2025年8月6日に公表された記事「80 Years of Lies: The US Finally Admits It Knew It Didn’t Need to Bomb Hiroshima and Nagasaki」を紹介します。
著者のアラン・マクラウド氏(Alan MacLeod)は『ミントプレス・ニュース(MintPress News)』の上級記者です。『ミントプレス・ニュース』は、オンラインニュース・ジャーナリズム媒体の一つです。CNN、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストなど米国大手メディアとは異なる視点から報道する反主流メディア的スタンスを取っています。おこがましいですが、このRay of Letters が目指すのと同じように、Alternative Media の一つと言えるでしょう。
アラン・マクラウド氏は、2017年に博士号を取得後、『Bad News from Venezuela: Twenty years of fake news and misreporting(ベネズエラの悪報:20年にわたるフェイクニュースと歪曲報道)』および『Propaganda in the Information Age: Still Manufacturing Consent(情報時代のプロパガンダ:いまだに続く同意の製造)』という評価の高い2冊の著書と、数多くの学術論文を執筆。FAIR.org、ガーディアン紙(The Guardian)、サロン(Salon)、グレイゾーン(The Grayzone)、ジャコバン誌(Jacobin Magazine)、コモン・ドリームズ(Common Dreams)などにも寄稿しています。彼のXアカウントは、https://x.com/AlanRMacLeod。
この記事の内容は、タイトルが表しているように、アメリカがとうとう広島・長崎への原爆投下は必要がなかったことを認めたということを当時の関係者からいくつもの証言を並べて示していくというものです。
しかし、このタイトルには注意する必要があります。主語の「アメリカ」とは誰のことなのか?歴代のアメリカ政権のことなのか、現政権のことなのか?あるいは、アメリカの一般大衆のことなのか、一部の政府高官や研究者のことなのか?
それは記事を読めば明らかになりますが、例えば、戦中の日系アメリカ人の強制収容が公式に違憲であったとアメリカの最高裁が確認したとのと同じようなことが、原爆投下に関して行われたかというと、そういうことは全くないのです。
ですから、「The US finally admits…(アメリカはついに認めた」というタイトルの付け方は誤解を招きます。アメリカ政府が公式に原爆投下は間違っていたというような表明をしたわけではないからです。
それでも、著者のアラン・マクラウド氏がこの記事で詳細に整理しているように、アメリカの原爆投下は間違っていたと考えるアメリカ人の証言を跡づけることには意味があります。特に日本人にとっては、修正主義でも自虐史観でもない歴史を語れる成熟を獲得しなければ、急激に変化している国際社会の構図の中で、日本国憲法が言うような「国際社会において、名誉ある地位」を占めることはますます難しくなるでしょう。
例えば、悪意も何もないとてもカジュアルでフレンドリーなアメリカ人と会話しているところを想像して下さい。アメリカによる長崎・広島への原爆投下が話題になったとしましょう。あなたは、その時、激昂することも卑下することもなく、どういうポジションで話をすることが出来るでしょうか?まず正確な知識が必要なのは言うまでもないでしょう。その上で、あなたは自分の意見を構築しないといけない。「分からない」と退行する道を選ぶのは幼児化です。
日系人強制収容の件が原爆投下の件と決定的に違うのは、この件に関してはアメリカ政府の行為が間違いであったということを公式のルートをつかって懸命に主張し続けた日系人がいたということです。その英雄的な努力なしでは何も起こらなかったでしょう。
強制収容所に入れられた日系人がアメリカ大統領の謝罪と賠償を得るまでの長い戦いについては、こちらをご覧ください。

80年の嘘:アメリカは、広島と長崎を爆撃する必要がなかったことを、ついに認めた
目次
- 80年の嘘:アメリカは、広島と長崎を爆撃する必要がなかったことを、ついに認めた
- 80年の嘘
- 最初は日本、次は世界
- 終末へと忍び寄る歩み
広島と長崎への原爆投下から80周年を迎えるにあたり、世界はここ数十年で最も核戦争に近づいている。
イスラエルとアメリカによるイランの核施設への攻撃、5月に勃発したインドとパキスタンの戦争、そしてウクライナにおけるロシアとNATO支援勢力との激化する暴力により、もう一つの核戦争の影が日常生活に大きく立ちこめている。
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