【Caitlin’s】MAGAは、それをジェノサイドと呼び、リベラルはそれを拒む

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まずこの記事のタイトルについて説明しておく。現題は、Marjorie Taylor Greene Called It A Genocide Before Bernie Sanders というものだ。直訳すると「マージョリー・テイラー・グリーンは、バーニー・サンダースより先にそれをジェノサイドと呼んだ」となる。

マージョリー・テイラー・グリーンや、バーニー・サンダースというアメリカの政治家の個人名を知らない人は日本では少なくないだろう。この二人の個人が何を代表しているのか分からなければ、このタイトルの意味も分からないので、日本語タイトルを「MAGAは、それをジェノサイドと呼び、リベラルはそれを拒む」にした。

マージョリー・テイラー・グリーンは、熱狂的なMAGA支持者であり、その発言が差別的であることで知られている。MAGAにおける重鎮というよりも、噛ませ犬的な存在として、反MAGA勢からは非常に嫌われている。日本で言えば、杉田水脈の立ち位置に近いかもしれない。

一方、バーニー・サンダースと言えば、左派ポピュリストの中心的人物としてリベラルの中でもエリート主義に反発する勢力の間に根強い支持がある。

MAGAみたいな移民排斥主義の連中がイスラエルによるジェノサイドを認めているのに、人道主義を説くリベラルがそれを拒否するとはいったい何事かというのが、このタイトルのまず第一段目の効果だろう。

しかし、アメリカ正解は、それよりも少しこみいったことになっている。というのは、MAGAの主張の一つであるアメリカ・ファーストは、移民排斥の源泉であるのと同時に、国内が大変な時に海外に干渉なんかしてる場合じゃないという態度の基礎になっている。だから、トランプが選挙運動時に孤立主義的なそぶりを見せていたことを歓迎していた。

ところが、トランプは当選後、急激に干渉主義へ旋回を始めた。その理由は、色々議論されているが、重要なのはMAGA創始者のトランプ自身がMAGA離れを起こし始めたということだ。MAGA支持者の有力者であるタッカー・カールソンや、MAGAの狂犬、スティーブン・バノンまでがトランプを批判し始めた。

MAGAの方がリベラルより人道的だという話ではない。MAGAはそもそもどこかよその国で起こっている大虐殺に深入りするアメリカを望んでいない。それをジェノサイドと呼ぶかどうかという議論そのものがMAGA的でないのだ。

その一方で、民衆の支持を得ていたはずの、左派ポピュリストたちのポジションが怪しくなってきた。というのは、清廉潔白だったはずのバーニー・サンダースが製薬会社からのお金を受け取っていたとか、左派ポピュリストの若手ホープであるAOC(アレクサンドリア・オカシオ=コルテス)が、ブロンクスの貧困地域出身だと言っていたのが嘘であったという事実が出て来て、彼らの信頼が揺らいできたからだ。

つまり、MAGAとリベラルを「右派ポピュリストvs左派ポピュリスト」という対立軸で語ることが滑稽な話になっている。ケイトリンさんがつけたタイトルは、その皮肉でもあるのだ。

さて、この記事は、ケイトリンさんのSNSでの発信のコレクションになっているので、上記の話はその一つに過ぎない。いくつかのトピックの混合になっているのだが、その一つにパレスチナの国家承認の話題がある。彼女はぬか喜びしているわけではない。

日本の政治家にも、パレスチナの国家承認がジェノサイドを終わらせるかのように言ってる人がいるが、そこにいったいどういう道筋を想定しているのかはまったく説明していない。パレスチナの国家承認とイスラエルによるジェノサイドを止めることの間には直接的な繋がりは何もない。

むしろ、イスラエルの自衛権理論にお墨付きを与えてしまう。占領国が被占領民に対して自衛権を行使するなんて話は国際法上はまったく論外なのだが、イスラエルはそういうポジションを強引に主張してきた。しかし、パレスチナが国家として承認されたなら、イスラエルはそれを逆手にとって、もはや遠慮なく国際法に則って自衛権を行使しているのだと主張出来ることになる。

パレスチナを国家承認するべきではないという話ではない。国家承認しようがしまいが、絶対に必要なのはジェノサイドをイスラエルに止めさせる具体的な手段なのだが、国家承認がジェノサイドを解決するかのように盛り上がって、それが棚上げになることが最も危険なことだ。

西側諸国がイスラエルへの軍事援助をやめて、いわば軍事的兵糧攻めを行わない限り、イスラエルはパレスチナの完全破壊の目標を追求し続けるだろう。

もし西側諸国がイスラエルへの軍事援助を断固として止めなければ、パレスチナの国家承認などなんの意味もない。ということは、イスラエルに軍事援助し続ける西側諸国に、武力を持ってでも対峙する国家が今の世界にあるかどうかという問いに行き着いてしまう。我々が非現実的な議論でお茶を濁してる間にも、パレスチナ人は殺され続けている。

他にも彼女の興味深い考察がこの記事にはいくつも入っているのだが、彼女は、このイスラエルという国家の行動が、あらゆる精神的・哲学的・心理学的な考察に対する攻撃でもあると捉えている一節は、今まさに多くの人が直面している問題だと深く共鳴するものがあった。


[原文情報]
タイトル:
Marjorie Taylor Greene Called It A Genocide Before Bernie Sanders
著者:Caitlin Johnstone
配信日:AUG 02, 2025
著作権:
こちらをご覧ください。
原文の朗読:
こちらで 聴けます。

MAGAは、それをジェノサイドと呼び、リベラルはそれを拒む

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