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今回のケイトリンさんの記事の現代は「After Iraq There’s No Excuse For Buying The War Lies About Iran」というもので、直訳すると「イラクの後で、イラン戦争の嘘を信じる言い訳はもう存在しない」みたいなことになる。ちょっと長いし、意味が分かりにくいと思って、上のように『イラクで騙されて、イランでまた騙される間抜け。』というタイトルにした。
「間抜け」という言葉を使ったが、これは文中に2回出てくるstupidとか、1回出てくるidiot の語感を活かそうと思って使った。例えば、「黙れ、このバカ」と訳したところの原文は、「Shut up, idiot」だ。
彼女が罵倒している相手は誰なのか?
それはこの表題の「イラクで騙され、もう一度イランで騙される間抜け」とは誰なのかということだが、それはネタニヤフでもトランプでもない、我々のことなのだ。全員とは言わない。しかし、我々という集合体の中のかなり多くの部分のことになるだろう。
欧米メディアとそれに追従するメディアのプロパガンダの凄まじさと巧妙さに、彼女は何度も何度も警鐘を鳴らしている。この記事もその一つであり、騙された人を貶すのが主旨ではなく、目を覚せというのが彼女の意図だ。
この記事には収められていないが、彼女のSNS投稿の一つにこんなのがあった。
How fucking stupid do you have to believe the lies about Iran? It’s just a much dumber, much more obvious version of the Iraq war narratives, pushed by a much dumber, much more obvious US president. With the benefit of having watched it all happen before.
At least with the Iraq…— Caitlin Johnstone (@caitoz) June 17, 2025
この投稿の主題は、今回の記事の主旨を凝縮したようなものだ。日本語に直すと以下のようになる。
X投稿訳:
どんだけバカじゃなきゃ、イランについてのウソなんて信じられるの?
これは、イラク戦争のときに使われたプロパガンダの、もっとバカっぽく、もっとあからさまにしたバージョンにすぎないでしょ。
しかもそれを押し出しているのは、当時よりももっとバカで、わかりやすいアメリカの大統領です。
しかも今回は、「前に全部見たことがある」という利点までついてる。
少なくともイラク侵攻のときは、ブッシュには1年半ほど圧倒的支持率があって、「悪者からアメリカ人を守る善人」ってふうに見せかけることができてた。
でも今回は違う。
この1年半というもの、アメリカは人類史上初のライブ配信によるジェノサイドを支持してきたのよ。
その間ずっと、イスラエルは世界中に向かって、「私たちはヒトラーです。私たちは新しいナチスです。子どもを殺しています」とでも言わんばかりの態度を取り続けてきた。
そして今、そのイスラエルのためにアメリカ兵が命を賭して戦わなければならないとでも言うつもりなの?
……いい加減にしてください。
まるで同じ脚本じゃないですか。
タイトルすらほとんど変えていない。ただQをNに差し替えただけでしょ。
これがどういうことなのか、まだ見抜けないなんて、言い訳の余地はもう残されていないでしょ。
QをNに差し替えただけという表現は面白い。確かに、Iraq のq をnに替えると、Iran になる。
「イラクで騙され」というのが、今、40代前の人にはピンと来ないかもしれないので、補足しておく。
上のカバー写真は、当時、国務長官であったコリン・パウエル(Colin Powell)が、2003年2月5日、国連安全保障理事会で、イラクが大量破壊兵器(WMD)を保有しているというアメリカ政府の主張を支持すプレゼンテーションを行ってるところで、これが、イラク戦争開戦を正当化する根拠の一つになった。
ところが、それはCIAに仕込まれた真っ赤な嘘であり、イラク戦争後も大量破壊兵器(WMD)などどこからも出てこなかった。つまり、コリン・パウエルは猿回しの猿に使われたことが後で分かった。ものすごい屈辱だっただろう。
2005年のABCニュースのインタビューで、パウエルは自らの国連プレゼンが「痛恨の極み」であったと述べ、「それは私のキャリアの中で最大の汚点(blot)だ。そしてそれは永遠に私と共に残るだろう」と発言している。
話が前後するが、パウエルは2004年の政権内閣再編で国務長官を退任し、その後、彼は共和党の主流派から距離を取り、後年はオバマ、ヒラリー・クリントン、ジョー・バイデンといった民主党候補を支持するようになった。これはネオコン主導の共和党外交路線への不信の表明と見られているが、オバマ、クリントン、バイデンらが、当時のブッシュ大統領やチェイニー副大統領以上に好戦派であることを証明された今から振り返ると、パウエルは結局、両陣営から騙されていたことになる。
当時、僕はブッシュ政権を鬼のように嫌悪していたが、コリン・パウエルという人には好感を持っていた。彼の発言には、ブッシュという猿にはない知性が滲み出ていたし、一国の政権内の人にしては、彼の言葉に真実味を感じた。ところが、彼は騙された。政界で生きるには彼は純朴過ぎたのかもしれない。
彼に興味を持ったので、彼の自伝『マイ・アメリカン・ジャーニー』を買って読んだ。今アマゾンをチェックすると、「2004年5月に購入」という表示が出てきた。絶版のようだが、中古で買えるだろう。3分冊になっているが、ニューヨークのハーレムで育った生い立ちから、統合参謀本部議長に上り詰めるまでの話が含まれていて、非常に興奮する本だった。これはお勧めしたい。
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