追記:参加者の感想などを一番下に追加しました。(2024年3月20日)
次のライブは、LIVE 61 「あの日、国際司法裁判所で何が話されたのか?」第二部になります。
Keep talking about Palestine
パレスチナについて語り続けましょう。
「パレスチナ人のために何かしたいが何も出来ない、無力感に打ちのめされる」というような投稿が少なくないです。自分もそう感じているという人も少なくないでしょう。
でも、一つだけ誰でも出来ます。パレスチナで起きていることを語り続けることです。彼らは過去80年近く、何度も何度もまったく理不尽な目にあわされ、何度も何度も世界から忘れられてきました。そして、その結果が、今起きている人類史上でも稀にみる大惨事とも言えるでしょう。
南アフリカによる緊急要請
2024年2月12日、南アフリカ共和国が国際司法裁判所に、”URGENT REQUEST FOR ADDITIONAL MEASURES UNDER ARTICLE 75(1) OF THE RULES OF COURT OF THE INTERNATIONAL COURT OF JUSTICE”を提出しました。国際司法裁判所規程75条(1)に基づいて、追加措置を緊急に要請するということです。従って、これまでの流れは以下のようになります。最後の赤字の部分が今回の緊急要請です。
前回の暫定措置の命令が公判から2週間後に出されたので、今回の南アフリカの申し立てが、追加的措置の緊急要請であることと、「極めて緊急な場合には、口頭審理を行わず」に暫定措置を命じることが出来る判例が確立していること(LaGrand事件)を考慮すると、今回も国際司法裁判所は、かなり早く、2週間くらいで決定を出すかもしれません。
今回のLIVE 61「あの日、国際司法裁判所で何が話されたのか?」第二部では、追加措置の緊急要請とそれに対する国際司法裁判所の決定(もし出ていたら)も含めて見ていこうと思います。
なぜ緊急に追加措置が必要なのか?
南アフリカ共和国の国際司法裁判所に提出したドキュメントには、なぜ南アフリカがイスラエルに対する緊急の命令を国際司法裁判所に求めるかの背景が説明されています。今回のLIVE 61 では、これについても原文に沿って説明しますが、南アフリカは世界中でイスラエルの残虐な行いに反対している人たちの代表として、国際司法裁判所に緊急措置の命令を出すように訴えていると言えます。
イスラエルはガザの住民を南の国境へ避難しろと言ってきました。その国境の街がラファです。元々人口が28万人くらいの街です。そこに今140万人のパレスチナ人がいます。ガザの北方は危険だから南へ行けとイスラエル政府に言われて逃げてきた人たちです。
1月26日に国際司法裁判所がイスラエルに対して行った命令は、「パレスチナ人を殺すな、パレスチナ人に精神的にも身体的にも危害を加えるな、パレスチナ人の生活環境を破壊するな、パレスチナ人の出産の妨害をするな」等々を含む命令です(下記引用参照)。しかも、「イスラエルは直ちに、自国の軍隊が上記のいかなる行為も行わないようにしなければならない」と念を押しています。
これを日本では国際司法裁判所は「軍事作戦の即時停止は命じなかった」と報道します。人は殺してはいけない、傷つけてはいけない、破壊してはいけないが、軍事作戦は続けて良いという解釈が詭弁にもならない。軍事作戦を因数分解すれば、それら全てが国際司法裁判所の命令に含まれていることが分かります。
国際司法裁判所がこのような言葉遣いをする理由は、これがジェノサイド条約を根拠にしているからです。南アフリカの主張は、イスラエルが行っている軍事行動はジェノサイド条約に違反しているということです。南アフリカは、ジェノサイド条約の条文に従って、何がどの条文に違反しているのかということを示しています。それに対して、国際司法裁判所の命令文も当然、ジェノサイド条約の文言を忠実に使っています。
2月9日、イスラエルのネタニヤフ首相は、その140万人のパレスチナ人が避難している小さな街を攻撃する計画を発表しました。人間がこれほど邪悪なことが出来ることの恐ろしさに世界は震えたのです(日本がどうだったかは知りません)。国連事務総長、パレスチナ地域の人権状況に関する国連特別報告者、UNICEF、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)、国連人道問題調整事務所(OCHA)、ノルウェー難民委員会(NRC) 、 セーブザチルドレンなど多くの組織が一斉に警告を発しました。ラファはまさにBloodbath(血の海)になるだろうと。
南アフリカ共和国が国際司法裁判所に緊急の追加措置を要請したのは、ネタニヤフ首相がラファ攻撃計画を発表した三日後です。政府というのはそんなに速く動けないものですから、これは異常に速い行動です。それくらい、南アフリカがこの事態を真剣に、深刻に捉えているということが分かります。彼らが世界の良識ある国の代表として戦ってくれていることが日本にあまり知られていないのが残念です。
実施日時:第一部:2024年2月11日午後1時
第二部:2024年2月25日午後1時(実施日が変わりました)。
実施方法:Zoom
参加方法:参加申込フォームに記入して下さい。開始時刻の6時間前が締め切りです。
参加料金:参加後に自分で決めることが出来ます。但し、零円以上いくらでも。
参加者の感想など
自分にとっての最初の大きな社会問題は南アフリカのアパルトヘイトだった。 その国の圧倒的なスピードと知の力による世界への働きかけに「(得体が知れないと諦めがちな)国の在り方は変わるのだ」という希望を抱く。 諦めてはいけないと思う。
takagi
ニュースを見ていても理解できなかったことを理解できたように感じた。各国政府や各団体の「ことば選び」に慎重かつ敏感になる必要があると感じた。この裁判について詳しく知ることが出来て、心から良かったと思います。
匿名希望
措置命令のうち出生を妨害してはならないという項目が他の殺害や破壊行為と異質に見えて、これはジェノサイドの特徴なのかと思っていましたが、今回改めて整理して理解できました。一般に戦争と言われて思い描く武力による破壊行為や侵略とは異なる観点のジェノサイドの意味が分かるので、今回の解説を踏まえてもう一度動画やドキュメントなどを見てみたいと思いました。
ns
南アフリカが知恵を尽くして論理を積み上げた提訴に国際司法裁判所も知恵を尽くして応えた決定であると思います。即時停戦を命ずる文言が記載されていないことを不満とする声が多いようですが、ジェノサイドを止めるべきであることを明示した内容と理解できました。
法律上で明確に禁止の文言がないことを理由に「それは違法ではない」とする解釈が生じることがあり、イスラエルは犯罪を犯していないとする理屈もこれと同等だと感じます。 法律や判例は逐語的に正確に読解し、ここに書かれていることに従って判断することを学習できない、または意図的に解釈を曲げる層が一定数は存在することを念頭に置いて考える必要があるとあらためて噛みしめています。
グローバルサウスとBRICSが米英を追い込む流れが動き出しているときに日本政府がどこを向いているのかと思うと絶望的な気分になりますが、諦めない投票行動を続けるしかないと思っています。
杉下 麗
よしさん、今日もありがとうございました。
国際司法裁判所の裁判について、動画が配信されて日本語訳もついて視聴することができるようになっていましたが、私はなかなかそこまで気持ちが向かず聴き逃していました。今日のよしさんの解説で、どんな方々がどんな構成でどんな内容のお話をされたのかよくわかりました。毎回LIVEのたびに思うのは、世の中で起こっていることはたとえ誰でも知るべき重要なことでも、自分ひとりでその情報を得て理解して生きるための判断材料とするには限界があるということです。本来なら、メディアの役割の部分でもあるとは思いますが、そこが期待できない場合、全くの無知な状態で日々過ごしてしまうと思います。また、私のように子育てだけに人生を費やしてきた人間にとって、子育ては自分の生活圏の狭い範囲にしか意識が向かなかったり時間も体力もなかったりするので、とてもわかりやすくコンパクトにまとめられた各トピックを短時間で学ぶことができるのは、とてもありがたいと思います。そして、今回LIVEは61回目で、どれだけたくさんのことを教えていただいたか、貴重な機会だったか身に染みています。
今日は、ジェノサイドがトピックで、とても辛く考えさせられました。私はそれほど熟考することもなく3人の子供の母になって、自分のお腹の中で子供を育て、出産後はなぜか自分の胸からあふれてくる母乳を子供が泣くたびに必死に飲ませ、子供達が小さい頃は1日1日子供の生命を維持するため大切に守るためにだけ生きてきました。私は、自分の子供も他の子供も、何においても守っていく存在、1番大事にしていくべき存在として認識して生きてきました。それにもかかわらず、このジェノサイドは、全くその逆、その子供たちこそがターゲットとして、毎日毎日、子供達の悲惨な状況を文字でも動画でも目にし、人間として母として、これは現実なのか私の頭も心も拒否反応を起こし、受け入れることが難しく、吐き気をもよおし、このまま自分が生きていくことへの勇気がなくなっていく思いでした。
ジェノサイドは憎しみの最終形態かと思います。人の心の中の小さな憎しみの種は、何かのきっかけでここまで残虐に大きくなってしまうということを人はみな自覚すべきと思います。子育ての視点からみた場合、子供達の心、精神の成長を見守ると同時に、大人である自分も省みる必要が大いにあると思いました。
この世界で生きていくために、思考と精神と両方の人間として成長が大事で、これからも、両方の研磨と進化を意識していきたいと思いました。
よしさん、お疲れ様でした。たくさんの学びをありがとうございました。
匿名希望
よしさんに解説して頂かないと周知されない。日本のジャーナリズムが、機能していない事に改めて愕然としました。
Roux
詳しい解説ありがとうございました。今回は南アフリカがイスラエルに対して起こした訴えそのものについてで、内容は初めて見るものばかりでした。
原告団として精鋭を揃えて準備万端で臨んだ南アフリカを見るに、「同じことを日本が何かの時にできるか? いやできないんじゃないか?」という疑問を抱いてしまうのは全く同感で、力不足か、または国民から見ても疑問な人選や主張ばかりが行われて結局は大恥をかきそう。国民として見ていると、大きく不満や鬱屈を抱くことになるだろうと思われます。
南アフリカ政府のジェノサイド停止の訴えには、スピードやクオリティの高さも含めて、感謝しかないです。世界中の心ある人々も同様であることでしょう。日本国憲法の前文に「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」という一文がありますが、今回、南アフリカがやって見せてくれたようなこそ「名誉ある地位を占め」ることではないか、と確信します。
問題は国際社会の全部が「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる」ようには見えないことで、アホはどこにでもいるとしても、アホのやることに加担してしまっているアホの国々が存在すること。人類はこれまでの歴史を通じていったい何を学んできたのかと絶望的な気持ちになります。人権をそれぞれの憲法で高らかに宣言していても、ジェノサイドを容認するなら嘘つきに過ぎない。こんな簡単なことをなぜ止められないのか、本当に分からないです。または、それなら世界中の他民族はもう必要ないから、シオニストだけが地球に生き残れば良いと思う。現在のような生活はもうできないだろうけど、それが彼らの望む世界であろうと思うからです。
匿名希望
詳しく解説していただいて本当によくわかりました。こういうことは自分で勉強しようと思っても難しいです。もっと多くの人が関心を持ってほしい。
匿名希望
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