CHAPTER 7 日本の憲法2

LESSON 3 憲法とは何か

自民党憲法改正実現本部

このビデオでは、まず最初に自民党憲法改正実現本部の話をしますが、これ自体は憲法とは何かというトピックと直接関係するものではありません。自民党の憲法改正に対する考えとそれを実現するための彼らの戦略を知るためには、間接的に部外者の解説を聞くのではなく、自民党が作っているサイトから直接情報を得るのが重要です。彼らが作っているパンフレットその他の資料や、彼らの憲法改正草案とそのQ&Aを注意深く読めば、彼らの思想が浮かび上がってきます。

自民党憲法改正実現本部の資料例(クリックするとダウンロードできます)

憲法とは何か

このビデオから自民党の憲法改正草案の何が問題なのかの話が始まります。ビデオの中では、以下の5つの項目に分けた目次が最初に現れます。

  1. 非憲法化
  2. 個人の消滅
  3. 家族の導入
  4. 集団的自衛権
  5. 緊急事態条項

このビデオでは、まず「憲法とは何か」ということについて、もっとも基本的なことを極限まで短縮して話しています。これを理解した上で、自民党の改憲草案を読めば、それが改憲というよりも、”非憲法化”であるということが理解できると思います。憲法理解の出発点は、

憲法は、国民が権力を縛るもの

ということです。国民が権力を縛るために出来たものが憲法ですから、これを転倒させると、それは憲法ではない別のものです。

このビデオでは、ダイジェスト版なので、古代からの人類の歩みは省略してますが、憲法リテラシーの本編では、ヨーロッパに偏らない地理的範囲で古代から憲法の萌芽を探す話をしています。このビデオが触れているのは直近の近代で憲法がいかに発生したかという話です。権力者が大勢の民に命令を下すという形態は、様々な変形をもって、それまで何万年も続いていた形態です。それを大逆転させるという文字通り前代未聞の事業が近代革命だったのです。二度と元の木阿弥にならないように、それを固めたものが憲法です。憲法は国民が権力を縛るものではないという人は、そもそも憲法の概念を理解していないということになります。

自由権から社会権へ

憲法の二本の柱は、人権と統治です。このビデオでは人権の発展史を話します。現在では、基本的人権として様々な権利を耳にしたことがあると思います。思想・良心の自由、信教の自由、学問の自由、内心の自由、表現の自由、集会の自由、結社の自由、職業選択の自由、居住移転の自由、財産権、プライバシー権、国民の知る権利、国民の個人情報を守る権利、犯罪被害者の権利、環境権、知的財産権、司法への国民の参加の権利、環境権、情報開示請求権、名誉権、知る権利、環境権、自己決定権等々。

あまりに多くの言葉が出てくるので、全体が見えなくなりがちですが、始まりは自由権にありました。一人の君主が全ての権利を持っている時代から抜け出すためには、まず「国家からの自由」が必要だったからです。といっても、国家から逃げるわけではなく、国民が自分たちが希望するような国を作って行かなければ、せっかく手にした自由もまた奪われてしまうかもしれない。そのために出てきたのが参政権という概念です。参政権を単に選挙権であるかのように語られるのを聞いたことがあるかもしれませんが、それよりもとんでもなく大きな意味があったのです。自分たちの国を作るという意味です。参政権は「国家への自由」を保障する権利なのです。

このビデオでは、国民が自由を得て、少しずつ政治に参加することができるようになって、産業革命や植民地の拡大にともなって、大きな貧富の格差が現れた話をしてます。それが資本家と労働者という階級格差としても説明されます。ここで、人類は気がつきます。国民が自分たちの税金で自分たちの委託を受けて働く国家、自分たちが作った国家には、国民が幸せに暮らせるようにする義務があり、国民にはそれを請求する権利があると。それが社会権という概念です。これによって国民は始めて「国家による自由」を手にすることが出来るようになったのです。